『人生やらなくていいリスト』四角大輔著 を読んで
顧問先のドリームキラーにならず、YESマンにもならない
税理士は顧問先から意見を求められる事がよくあり、それは税務や会計に関することに限らず多岐にわたります。
例えば、決算書をもとに顧問先と業績の振り返りをした上で将来への展望をお聞かせいただく事があります。展望には具体的で明確になっているものもあれば、まだアイデア段階のものもあります。アイデア段階のものは顧問先の中でもまだ煮詰めていないので、その内容に疑問点が生じることもあるのですが、これに対し指摘をせずお客様の話の腰を折らずに傾聴することにしています。なぜなら、税理士といえどもビジネスで何が成功するのかを判断することは難しく、またアイデアの段階で細かく指摘することは成功の芽を積むことになると考えるからです。税理士が顧問先のドリームキラーになってはいけないと意識しています。
一方で、アイデアから次のステップに進み具体的になってきた場合には、予想数字などを元に指摘させていただくこともあります。この時点においてもビジネスが成功するのかを判断することは難しく不明確です。しかし、顧問先の考えに何でもYESと言っているようでは顧問先も私も発展がありません。あくまで参考意見の範囲を超えませんが、もし自分だったらどうするか当事者意識を持って意見を述べさせていただいています。
顧問先から将来の展望のアドバイスを求められたとき、アイデアの段階では「ドリームキラーにならないこと」を意識し、アイデアから一歩進んで具体的になってきた段階では「YESマンにならないこと」を意識して顧問先と向き合いたいと考えています。
個人の最初の思いつきというのは、妄想に近かったり、無謀だったりする。でも、この「空想力」こそが、人間の創造性の源であり、無限の可能性を生み出す宝のような存在。だからこそ、実現化が難しくて当然なのだ。 でも、「自分で経験していないこと、想像できないことはすべて否定」という「ドリームキラー」と呼ばれる人に最初に話してしまうと、即否定され、そのアイデアは殺されてしまう。 彼らは決して「人間の空想力の素晴らしさ」を理解できない。そして、日本にはこのドリームキラーがたくさんいるから、細心の注意が必要だ。 必ず最初は、本当の「味方」と思える人に、話そう。
ぼくは、アーティストの「ただのおともだち」になって、隣で「 YES」と言い続けてあげることが仕事だと勘違いしていた。 でも、それはまったく彼のためにはなっていなかったのだ。 この経験から、本気の愛をもって、相手のことを理解すべく考え抜いた結果であれば、意見が違っても、人間関係が壊れることはないということを学ぶことができた。
働き者として評価されること、生産性の高さを評価されること
税理士として開業当初は、夜遅くまで事務所に残り「いつも遅くまでお仕事を頑張っていますね」と周りの人に言われることで充実感を得ていました。時間給では無いのに長時間働くことが良い事と盲信し、周りから「働き者」として評価されることが税理士として成功することにつながると考えていました。
しかしながら、お客様は私が長時間働くことに報酬を支払っていただいているのではなく、お客様のために行動したことに報酬を支払っていただいています。
この当たり前の事実に気づいてからは「長く働くこと」より「生産性の高さ」を意識した働き方に変えることができました。
たくさん仕事をこなし、誰よりも忙しそうにしている。 率先してサービス残業し、深夜や休日に自主的に自宅でも仕事をする。 日本では、いまだにこういう人が「働き者」として評価されるが、それは完全に間違っている。
ぼくが知る欧米では、当然、「長く働くこと」より「生産性の高さ」が評価される。 ちなみに、「働きすぎ」と揶揄される日本人の生産性は、先進国で最低レベルだという残念な調査結果があることも、ぜひ知っておいていただきたい。
自分を顧問税理士に選ぶかどうか基準
税理士として開業してからは、お客様に自分を選んでいただくため、ブランディングやマーケティングに関する知識をネットや書籍などから得ることをはじめました。
しかし、ブランディングやマーケティングは奥が深く、税理士業務の片手間で身につくものではありません。市場はどのような税理士を求めているのか、今後どのような税理士が求められていくのか等、これらのことを考えることは大切なことですが、正解がないものです。
そこで私はもう少しシンプルに「もし自分が顧客だったら、自分を顧問税理士に選ぶかどうか」を考えるようにしています。目の前にいない顧客のニーズを想像するより、自分だったらどんな税理士に依頼したいかを考える方が明確になると思うからです。
自分が頼みたい税理士になることは、きっとお客様にとっても頼みたい税理士になるのではと考えています。
ブランディングにおいて、もっとも考えなければいけないのは、「どうすれば、その人の魅力を最大限に引き出すことができるか」。 市場を分析して、その結果に合わせたり、見つけ出した空席にむりやり座らせるのではなく、そのアーティストの「唯一無二の個性=オリジナリティ」を見つけ出して、それを際立たせ、可能な限りそのまま発信する。 そうやって、競争相手のいない「これまでにない新しい席=新しい市場」を創造すべきなのだ。これこそ文字通りの「マーケティング=市場創造」。
市場調査を無視し続けてきたアップル社のすべてのヒット製品は、あのスティーブ・ジョブズが「個人的にほしかったモノ」だったとぼくは想像している。 これぞまさに、「誰かひとりに向けてのヒットの法則」の実例だ。