『ザ・ゴール』エリヤフゴールドラット著 を読んで

目標と手段を履き違える

 税理士業務を行う上で、「業務を効率化し、生産性を高めよう」と考えて行動しています。では、ここにいう生産性とはどういう意味なのかと問われると、「より多くの業務をこなすこと」や「お客様により多くの価値を提供すること」など曖昧に生産性という言葉を使っていることに気付きます。本書では生産性とは『自己の目標と照らし合わせて何かを達成すること』、『目標に向かって会社を近づける 、その行為そのもの』と定義しています。ではその目標とは何でしょうか。効率的に仕事をすることでしょうか、それとも、お客様の困りごとを解決すること、節税策を検討すること、新しい業務フローを構築すること、新しいソフトウェアを研究すること、顧客満足を高めること、でしょうか。本書ではこれら一つひとつは目標ではなく、目標を達成するための手段であると指摘し、企業の究極の目標は『現在から将来にかけて金を儲け続けること 』と定義しています。お金を儲けるというあまりにも直球な目標に一瞬ためらいを感じますが、これは商売の常識であり、目標が何なのかを理解しないまま手段にばかり目がいっている自分に気付きます。目標を明確にした上で生産性を高めていくことが、正しい業務の効率化を可能にし、自分とお客様の両者の利益につながるのでしょう。

「生産性とは目標に向かって会社を近づける 、その行為そのものだ 。会社の目標に少しでも会社を近づけることのできる行為は 、すべて生産的なんだよ 。その反対に目標から遠ざける行為は非生産的だ 。わかるかね 」 「ええ 、でもそれは単なる常識では 」 「その単純な論理こそが 、重要なんだ 」

 

生産性なんてものは目標がはっきりわかっていなければ 、まったく意味を持たない

 

目標として考えられるすべての候補を書き出した 。低コストで仕入れること 、人を雇うこと 、最先端の技術 、製品を製造すること 、品質の高い製品を製造すること 、品質の高い製品を売ること 、マーケット ・シェアを獲得すること 。これ以外にもコミュニケーションや顧客満足なども付け足した 。どれも事業をうまく運営するには不可欠だが 、いったい 、何の役に立つのだろうか 。会社がお金を儲けるために必要なのだ 。だが 、一つひとつは目標ではない 。目標を達成するための手段なのだ 。

 

忙しくすることが儲けにつながるわけではない

 私は妻と二人で税理士事務所を営んでおり、日々の業務の中でやることが無くなって時間が空くタイミングがあります。夫婦ともに時間が空くこともあれば、どちらか一方のみが時間が空くこともあります。やるべき仕事をした後に時間が空いたのだからなんら問題がないのに、まるで「何もしない=悪」のような感覚になり無理に仕事を作って何かの作業をしていなければ落ち着きません。しかし本書で言うように『リソースを使用することと 、リソースを活用することは別 』であるから、目標達成のためだけに働く(時間を使う)べきで、ただ単純に最大限まで働く(時間を使う)ことは誤りです。目標達成のために働いたのであればその後の空いた時間は何もやらなくてもまったく問題ない。むしろリソースに余力を残しておくことが目標達成に近づくので、「何もしない=悪」の概念を捨てよう。

人を働かせることとお金を儲けることは同じことだと考えてもいいのだろうか 。これまではそう考えていた 。常に人を働かす 、製品を作って出荷する 、やる仕事がなかったら仕事を作る 、やる仕事を作れなかったら人を別の場所に移す 。それでも仕事をさせることができなかったら 、クビにする 。それがこれまでの基本ルールだ 。辺りを見回すと 、みんな忙しそうに何か作業をしている 。例外的に手を休めている者も所々にいるが 、たいていの人間はほとんどいつも何かの作業をしている 。しかし儲からない

 

君たちが作った在庫の山を見るんだ 。勝手に大きくなったわけではない 。君たちが作ったんだ 。どうしてだね 。それは君たちの仮定 、つまりみんなを一〇〇パーセント 、いつも働かせないといけないという考えが間違っていたからだ

 

『リソースを活用する』とは 、目標達成に向かって工場を動かすためにリソースを使うことであり 、一方 、 『リソースを使用する』とは 、単純に機械や装置のスイッチを入れたりする物理的な作業のことで 、利益が出ようと出まいが関係ないというのがジョナの説明だ 。だから 、非ボトルネック 、つまりリソースをただ単純に最大限まで働かせることは 、まさに愚の骨頂なのだ 。

 

コスト第一主義からスループット第一主義へ

 税理士という職業柄、お客様の決算書をみる際に注視するものとして「コスト」があります。無駄なコストはないだろうか?前年比でコストが増えていないだろうか?コストを削減するには?といった視点でコストを検討しアドバイスする事がお客様への重要な情報提供のひとつと考えていました。しかし果たしてお客様の商売の目標はコスト削減なのでしょうか?お客様の商売の目標はお金を儲けることです。もちろんこれまでもお客様の儲けを意識していましたが、本書を通じて改めて考えるとコストを第一に考えていたことに気付きます。コスト第一主義から、儲け、つまりスループット第一主義へ。当たり前のことですが、この発想への転換の必要性を痛感しました。

「改善という言葉は 、どこへ行ってもコスト削減と同義語だと考えられています 。まるで一番重要な評価基準であるかのように 、みんな 、経費削減に躍起になっています 」 「それだけじゃない 。以前の我々だって 、経費節約にまったく役立たないようなコスト削減ばかりやっていました 」ボブが言った 。 「そのとおり 」ルーが 、ボブに向かって言った 。 「重要なのは 、スループットこそが一番重要」

 

「これまでいろいろ変えてみたり 、ルールをことごとく破ってきましたが 、全部に共通していることが一つあります 。すべて 、コスト会計をベースにしていたことです 。各ワークセンター単位の効率 、最適バッチサイズ 、製品コスト 、在庫評価これらはすべて同じ考え方からきています 。それに対して 、私も以前は特に問題を感じていませんでした 。ただし 、経理マンとして長年 、コスト会計の有効性について多少の疑問を感じていたのも事実です 。コスト会計が始まったのも二〇世紀の初めのことですから 。当時は 、状況もいまとはずいぶんと違っていたはずです 。事実 、 『コスト会計を基準にしているものなら間違っている 』というガイドラインを判断基準にしてもいいのではないかと 、私自身考え始めていたところですから 」