第一に効率ではなく、第一に問い 〜『これまでの仕事 これからの仕事 ~たった1人から現実を変えていくアジャイルという方法』市谷聡啓著 を読んで〜
「こういう税理士でありたい」ではなく「こういう税理士にはなりたくない」を考える
「こういう税理士でありたい」自分が考える理想の税理士像に近づこうと自らを高めようとするものの、では、あらためて自分が考える理想の税理士像とは何かと問われると明確にならないものです。
自分が考える理想の税理士像が明確ではないため、なんとなく世間からみて税理士とはこうあるべきなんじゃないか、とか、なんとなく世間からみて税理士とはこういう行動をとるんじゃないか、という考えになります。
しかし、この考えには2つの問題点があります。一つは、「なんとなく」といった明確なものではないこと、もう一つは、「世間からみて」という目線となっており、「自分」の目線ではないこと、つまりこれは、自分が考える理想の税理士像ではないのです。
このようななか、理想の税理士像に近づこうと闇雲に研鑽を積んでも、結局それは遠回りの可能性があるし、何よりも、その先に自分が望む税理士になり得るのか疑問です。
したがって、「こういう税理士でありたい」と自分が考える理想の税理士像を定めることは難しく、努力の方向性を誤るリスクがあります。
一方で、「こういう税理士にはなりたくない」を考えるのはどうでしょうか。
これまで仕事をしてきた中で、「こういう税理士にはなりたくない」と考える税理士像がいくつかあると思います。こういった税理士像を反面教師にして「こういう税理士にはなりたくない」と自分を高めていく方法です。
この方法では、「こうはなりたくない」「こんなことはしたくない」「嫌だな」と心で感じる違和感をきっかけにするものです。そのため、先述した「こういう税理士でありたい」のように頭で考え想像するよりも、「こういう税理士にはなりたくない」という方が税理士像が明確になりやすいのではないでしょうか。
不明確な「こういう税理士でありたい」よりも、「こういう税理士にはなりたくない」という違和感を大事にし、違和感をもとに明確な指針に沿って、自分が考える理想の税理士像に近づきたい。
「こうありたい」を自信を持って語ることは難しい。おそらくきみが置かれている状況は、まだ実現していないこと、到達していないことに確信を持って「目指すべきものである」と言えるほどわかりやすいものではないだろう。わからないからこそ踏み出せていないのであり、むしろ避けているのかもしれない。一方、逆に「こうではない」「こうはありたくない」は言いやすいところがある。正解はわからないにせよ、違和感を頼りに少なくとも「こうではない」と否定することができるとしたら、やはり芯は近い。
どうあるべきかまでは自信を持って言えないが、少なくとも「そうではない」と言えること。なぜ、違和感を感じるのかに向き合ってみよう。
「第一に効率」ではなく、「第一に問い」
効率化を詠う新しいツールがでると、すぐにそれを導入しなければならないと考えがちです。そのツールの導入により、これまで非効率だった仕事が効率化し全てが解決することを期待します。
そのほか、ツールに限らず効率化のためのノウハウが記載された書籍やセミナーなどが世間には溢れており、「効率化」を検索ワードに入れれば効率化に関する多くの情報が手に入る状況です。
そのような状況の中、私は仕事をする上で「効率化」が重要な鍵になるものと位置付けし、ネットや書籍、セミナー等から日々知識を吸収しようとしています。
しかしながら、そのような「第一に効率」とする考えに反し、著者は「第一に問い」であると指摘します。
日本の組織には共通するメンタリティが存在する。それは「効率性第一(効率性ファースト)」ということだ。これは、「仕事とは効率的に進めるものである」という、仕事に関する伝統的な価値観とも言える。
第一に、「問い」を立てて向き合うこと。効率性ファーストの裏返しとは、立ち止まって考えることだ。そこから始めないと、そもそも実現したいこととそのための手段が合っているかもわからないままだ。問いを立てることもなく、いきなり仕事に突入していくのは止めよう。
私が効率化のために新しいツールを導入しようとする時は、これまでの仕事のやり方に非効率な部分、課題を感じているからこそ効率化するためにツールの導入を検討します。
そのため、「問い」を全く立てずに、いきなり「効率」に走っているわけではありませんが、著者の言う『問いに向き合う時間が圧倒的に不足している』ことは否めません。
「効率」という言葉に、過剰に反射的に反応するのではなく、まずは「問い」を立てることを意識して考えていこうと思う。
私たちは意外にも「問い」を立てることに慣れていない。効率性ファーストの世界では、スタートから、やるべきこと、タスクを積み上げて、それを順次片づけていくというモードにいち早く入っていく。どのような「問い」に答えるべきなのか、「問い」を設定するということが少ない。それでは設問が何かをろくに確認せず、いきなり試験の解答用紙を埋めようとするようなものだ。でも、こうした進め方に慣れ親しんできたのがこれまでなんだ。この進め方に染まってしまっているほど、そもそも「問い」をどう置けばいいかで迷うことになる。何に答えるべきかは、もちろんテーマやその時々の状況によって変わる。何らかのプロジェクトの開始時点であれば「われわれはなぜここにいるのか?」といった根本的な狙いを問うところから始めるのがいいだろう。特に仕事を始める最初の段階は、「なぜやるのか?」といった根本から考えるべきだ。