考えながら書くことで何が変わるのか 〜『アウトライナー実践入門 』Tak.著 を読んで〜

文章作成についてのこれまでの考え方

 文章を書く場合は、まずはアウトライン(見出し)を作ってから書くものと習ってきました。例えば、大学では論文を作成する際に、アウトラインを作ってから書き始めるものと習いましたし、税理士試験の理論問題を解答する際にも、まずはアウトラインを作ってから書き始めるようにと習いました。このように、文章を書くにはアウトラインを完成させてから文章を書き始めるのが正しい方法であると考えていました。

 しかし、一方で、アウトラインがいつまでも決まらずに文章を書き始められないことや、アウトラインを作ること自体が億劫になり、最近はGoogleドキュメントにアウトラインを作らず直接文章を書いていました。

 アウトラインを作ってから文章を書く方法、アウトラインを作らずに文章を書き始める方法、いずれにしても私にとってはしっくりくるものではなく、文章を書くことの難しさは変わらないものでした。

「アウトラインを作ってから書く」ということは、言い換えれば「考えてから書く」ということです。しかし、書こうとする内容を事前に完全に決めておくというのは、ほとんどの場合、不可能です。何をどんなふうに書くべきかは、多くの場合「実際に書くこと」を通じて初めてわかってくるからです。事前に完璧なアウトラインが作れるようなら、アウトラインなど作っていないで、最初から本文を書いたほうが早いでしょう。

文章を書くのにアウトラインを作るのと作らないとではどう違うのか

 アウトラインを作ってから書き始める場合のメリットは、アウトラインが文章を書く際の道標となり、文章が脱線しづらいことが挙げられ、デメリットは、アウトラインを作れるまで文章を書き始められないことが挙げられます。

 一方で、アウトラインを作らずに書き始める場合のメリットは、アウトラインを作らずに書き始めるので、文章を書き始めの時間がはやいことが挙げられ、デメリットは、道標となるアウトラインが無いので、文章が途中で脱線する可能性が増えることが挙げられます。

 このようにそれぞれどの方法においてもメリットデメリットがあります。そのため前述した通り、私は文章作成方法として「アウトラインを作ってから書き始める」がセオリーと知りつつも、Googleドキュメントにアウトラインを作らずに直接文章を書いてきました。

「考えながら書く」こと「書きながら考える」ことの実践

 著者は、アウトラインを作成してから文章を書くことの重要性を指摘しつつも、これまでのアウトライン作成の問題点と、アウトライナーを使ってアウトラインを作成することの有用性を説き、「考えてから書く」のではなく、「考えながら書く」、あるいは「書きながら考える」という、文章作成のための新たなアウトライン活用法を提案しました。

紙のアウトラインが「死んだアウトライン」だとすれば、アウトライナーで作るアウトラインは「生きたアウトライン」だということです。「生きたアウトライン」が画期的なのは、文章を書きながら同時進行でアウトラインを作れることです。そして後からいくらでもアウトラインを修正できることです。つまり「考えてから書く」のではなく、「考えながら書く」、あるいは「書きながら考える」ことが可能になったのです。

 直近でセミナーを開催する予定があったため、著者のいう「考えながら書く」、「書きながら考える」に挑戦するために、アウトライナー作成ソフト『workflowy』を使って、セミナー資料作成にチャレンジすることにしました。

 これまでのセミナー資料作成方法は、Googleスライドを使ってアウトライン無しで直接スライド作成をしていましたが、今回は、workflowyを使って、どのようなセミナー構成にするのかアウトラインを考え、思いつくままにその内容をworkflowyに記載しました。そして、随時新たなアウトラインを作成したり、アウトラインの並びの入れ替えをしながら資料の作成を進めました。

 この方法でセミナー資料を作成し終えた感想として、まず残念な点としては、完成までにかかる時間が以前より減らなかったことです。これまでのスライド作成方法とは違う新しい試みを試しながらのため、時間がかかることは仕方がなく今後慣れてくると時間の短縮になるのではないかと考えます。

 良かった点として挙げられることがいくつかあります。アウトライン作成や訂正、移動がしやすいので、頭の整理がつきやすいことや、これまで、アウトライン無しに闇雲にスライド作成していたため、資料を作成している途中で、自分の伝えたいことを見失うことがあったが、この方法ではアウトラインに沿ったかたちでスライド作成を進められるので、途中で伝えたいことを見失うことなくスライド作成ができたこと。そのほかにも、Googleスライドで直接入力し始める場合は、文法が気になって気軽に文章を書けないことがあったが、workflowyを使うと、文法を気にせずに短い文章で書き進めることができるため、文法などに縛られることなく、書くことへの敷居が低くなりました。

 今回新しい方法を挑戦したことで、以前に比べて目に見えて劇的に変化することはないが、頭の整理に役立つことや、スライドを作成する際の道標となること等からこの方法は有用だと考えます。そして、何よりこの方法の一番のメリットは、肩肘張らずに文章を書くことができることができるようになることです。今後もこの方法で、文章作成をしていこうと考えます。

アウトライナーは「アウトラインを作ってから文章を書くためのもの」というのは誤解。何をどんなふうに書くべきかは、多くの場合「実際に書くこと」を通じて初めてわかってくる。

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