自分にしかできない仕事とは 〜『ゼロから“イチ”を生み出せる! がんばらない働き方』ピョートル・フェリクス・グジバチ著 を読んで〜

「自分にしかできない仕事」とはなんだろう

「他の誰かができる仕事をがんばる」を捨てて「自分にしかできない仕事」や、学びが多い仕事に集中する

 これからの時代は「自分にしかできない仕事」をやろう。他の誰かができる仕事は誰かに依頼するか、AIに任せよう。このような考えを見聞きします。この考えに対し、その通りだと納得する一方で、「自分にしかできない仕事」って一体なんだろうと悩みます。「自分にしかできない仕事」と問われてもパッと思いつくものではないから、結局のところ、とりあえずこれまで通りの仕事をこれまで通りのやり方で続けてしまいがちです。「自分にしかできない仕事」を知るには、一度立ち止まって、このことについて真剣に考える必要があるのかもしれません。そして、これは簡単に答えが出るものではないと思います。

 「自分にしかできない仕事」を知るきっかけになるものとして、著者の言う「学びが多い仕事」に意識して取り組んでいくことがポイントになるのではと思います。では「学びが多い仕事」とは何かいうと、これまでのルーティーン化している仕事ではなく、これから先を見据える上でチャレンジしたい仕事を指すと考えます。 

 ただし、この「学びが多い仕事」は、現在の収入に直結するものではないことが多いため、これに100%労力と時間を費やすことは生活の安定を考える上では危険です。バランスが必要だと考えます。

何でもかんでもチャレンジするべきだ、とは思いません。新しい仕事と既存の仕事のバランスをとることも、ビジネスでは大切なことです。新しい仕事イコール失敗する確率が高い仕事とも言えます。そのため、新しい仕事に比重を置きすぎると、会社としては事業の継続性に大きなリスクを抱えることになるのです。それは働く人一人ひとりにおいても同様です。

 私が最近取り組んでいる「学びが多い仕事」としては、「スマホを使った経理」を研究しお客様に推進することです。これはクラウド会計ソフトのスマホアプリを使って記帳していくものです。これまで記帳といえば、パソコンを使って日々処理していくことがメインでしたが、電子帳簿保存法によりスキャナ保存が可能になったことや、パソコンが不慣れな方でもスマホは抵抗なく操作できる可能性が高いことから、経理に携わる方に記帳することのハードルを下げ、尚且つ、最新の税制にも対応していくため「スマホを使った経理」を推進していこうと考えるためです。

 この「スマホを使った経理」で使用するスマホアプリは順次アップデートされていくものなので、この進化に対応すべく学び続ける必要があります。

 また、この「スマホを使った経理」は、スマホを使うというこれまでの発想と変わった視点の取り組みになるので、これをきっかけに、これまで当たり前としてきた経理の流れを見直し、非効率なものをより良いものに改善していくきっかけになり多くの学びがあります。

 そしてこの学びから、顧問税理士である自分が顧問先の経理の流れに対し積極的にアドバイスをすることが可能になりました。これは誰でもできる仕事ではなく、「スマホを使った経理」という「学びの多い仕事」を通じて経理の見直しに取り組んできたからこそできるものと考えます。つまり、これは「自分にしかできない仕事」といえます。

 これからも、「学びが多い仕事」をきっかけに、「自分にしかできない仕事」を増やしていこうと思います。

①インパクトが大きく、学びも多い仕事 ②インパクトは大きいが、学びは少ない仕事 ③インパクトは小さいが、学びは多い仕事 ④インパクトが小さく、学びも少ない仕事  このうち、④は極力捨てて、そこで節約できた時間を利用して ①を増やしていく、というイメージです。

③の、インパクトは小さいが、学びは多い仕事は、長期的な投資として行うイメージです。僕の場合だと、たとえば魅力的なスタートアップに関わることや、メディアの取材を受けること、自分の専門以外の領域を勉強すること等です。すぐにお金にはならないかもしれませんが、仕事の6~7割は将来の土台づくりのためにあてるべきだと僕は考えています。それが未来の①や②の仕事に成長してくれるかもしれないからです。僕にとっては、語学を学ぶことも③の1つです。

 

「効率を求める」よりも「捨てること」の方が重要

 税理士として独立開業してからというものの、効率化という言葉に魅力を感じ、ショートカットを覚えたり、タイピングの練習をしたりと効率化へのテクニックを身につけることを意識しています。この効率化のテクニックを使うのと使わないのとでは、明らかに仕事のスピードが違うためこれからもテクニックを学び続けようと考えます。

 しかし、このテクニックを重要視することについて著者は下記のように指摘します。

ショートカットをいくら覚えても、仕事が5%、10%速くなることはあっても、5倍、10倍のスピードアップは望めないでしょう。そこで、思いきって「捨てる」という判断が効いてくるのです。

 テクニックも大事だが、何よりもその仕事は必要なのだろうか、自分ではやるべき仕事と考えているが、もしかしたら不要な作業なのではないだろうか。このように自分が日々取り組んでいることを棚卸しして、不要なタスクを「捨てる」ことからはじめようと思います。

 

100パーセントの正解と、100パーセントの間違いについて

「仕事とはこうあるべきだ」というバイアスから抜け出し、もっとも生産性高く仕事ができる環境を、自分の手で作ることが必要です。

 「仕事とはこうあるべきだ」という常識から抜け出そうとすると、これまでやったことのない新しいことにチャレンジすることになります。新しいことをやるのは不安がつきものです。もし失敗したらどうしようという考えが頭をよぎります。

 その新しいことが仕事に関するものなのであればなおさら不安になります。なぜなら、失敗した場合は収入が減り生活が成り立たなくなるのではと考えるからです。失敗して生活が苦しくなるリスクがあるぐらいなら、現状維持がいいと考えがちです。現状維持でも様々な問題はあるだろうけれど、これまで成り立ってきたんだから、失敗するリスクをとってまで新しいことにチャレンジする必要はないと判断し、何もしないことを選んでしまうことがあるのではないでしょうか。

どの選択肢にも100パーセントの正解もなければ、100パーセント間違いということもありません。でも、行動しないことがムダであることはわかります。起業するなら起業する、会社員を続けるなら続ける。そこは直感で選び、迷いを断つべきです。それが間違いだったと思えば、またそこで決断し、方針転換すればいいのです。決断が早いほどにダメージは軽くなります。

そもそも、完全な正解なんてないのではないでしょうか。正解か不正解かと考えてしまうと、間違いは避けたいという思いがムクムクとわいてきますが、実際の決断においては、ほとんどのケースはオールオアナッシングではありません。しかしベストの選択ではなかったと後でわかることもあるでしょう。そうなったら素直に反省して、やり直せばいいのです。「こんなはずはない」、「自分の決断は正しかったはずだ」などと、間違いを正当化しようとすると、それがまた時間のロスを生むのです。すぐにやり直せば、時間のロスもなく、ダメージも最小限に食い止められます。

 著者のいうように、100%の正解や100%の間違いはないと考えると気が楽になります。そして、進むも止まるも、自分の方向性は自分で決めていくべきだと考えます。リスクがあるからと、自分の進む方向性を自分で決めずに、世間が決めた「これまでの常識」に自分の人生を委ねてしまうことは問題なのではないでしょうか。自分の人生の決断について、これまでの常識というものに責任を押し付けて逃げるのを避けたい。なぜなら、どんな選択をしても100%の正解や100%の間違いはないのだから、恐れることなく、自分の人生は自分で責任を持って進んでいきたい。