税理士が「自分のために表現し発信する」ということ〜『発信する勇気 「自分らしいコンテンツ」は最高の出会いを作る』末吉宏臣著 を読んで〜

税理士として独立し開業してからはビジネス上の必要性から、営業の一環としてホームページやSNSを開設しネット発信をはじめました。

ネット発信では誰に向けた発信をするのかペルソナ設定が大事であるということをよく見聞きします。

それに倣って、私もネット発信をするにあたりペルソナ設定をし、その人に向けた内容の発信をはじめるものの、しばらくすると息切れしてしまい長くは続きませんでした。

現実に目の前にいるお客様のご相談に回答するのとは違い、目の前にいない架空の相手に対しての発信は実感が湧かず筆が進みません。

そのため、自分にとってネット発信をすることは、時間がかかるし、ネタも尽きてくる。さらには相手からの反応がない。これらのことから苦痛を覚え継続ができませんでした。

心に響く発信のコツは、あなたが自分に対して言ってあげたいありのままを書くこと。これに尽きます。ここで私と約束してください。まずは「自分のために表現する」と。

「架空の相手のために表現する」のではなく「自分のために表現する」のであれば、ネット発信のハードルが下がり、継続することができそうです。

伝えるべき相手が自分であり、自分に伝えたいことを書くのであれば、発信する内容が明確になるのでとりかかりやすく感じます。

ただしここで疑問に思うのが、「自分のためのに表現する」発信では、営業にならないのではないか、営業のためにネット発信をしようとしているのに、その目的を見失うことになるのではないかと思いました。

さらには、著名人ではない自分が、自分のために発信することに誰も関心がないのではないかと心配になります。

「名もなき人間の日常なんて、誰が読みたいの?」そんな風に思うかもしれません。しかし、一日の出来事1つとっても、今日という日をどう過ごしたかは、世界中探しても同じ経験をしている人はいません。つまり、あなたが生きた今日は、唯一無二の経験といってもいいでしょう。

必ずしも「有益で役立つ情報」だけが発信する価値のあるものではありません。「その人がどんな人なのか、よくわかる発信」が、これから求められる発信なのです。

自分に向けた発信をすることは、自分の人となりを表現することに繋がります。

自分の人となりを発信している人と発信していないとでは、お客様へのアピールに差が出ると思います。

例えば自分が顧問税理士を探している立場だとしたら、当然自分との相性が合う人を探したいものです。そのため、ホームページやブログ、SNSなどのネット発信をみて、どういった税理士なのか、自分と価値観が合う税理士なのかを検討します。

そう考えると、「自分のために表現する」ことは「表現する本人がどんな人間なのかを伝える発信」になり、そのことは、税理士を探しているお客様にとって「有益で役立つ情報」になります。

このように「自分のために表現する」ネット発信も営業につながる有用な情報となるのであるから、自信を持って発信していくべきなのでしょう。

この世界には、この瞬間にもあなたと同じようなテーマで苦しんでいる人、不安に震えている人がいます(中略)その人が深いところで必要としていたものを、与えることができるのです。でも、誰かを救ってやろう、問題を解決してやろうと気負う必要はありません。今のあなたのままを発信する勇気、必要なのはそれだけです。

上記のように、「自分のために表現する」ことが、もしかしたら、世界のどこかの誰かの悩み解決のきっかけになる可能性も考えられます。

 

以上のことから「自分のために表現する」ネット発信を続けることの有用性とその覚悟は決まりましたが、まだここで解決しない次の壁があります。それは、自分では美しい文章が書けないということです。

ネット発信するということは、誰にでも読まれる可能性があるものだから、稚拙な文章では恥ずかしい。これまでも文章を書いては消し書いては消しを繰り返しますが、それでも一向にうまい文章が書けないものです。プロのような美しい文章が書けない、稚拙な文章を発信することへの抵抗があります。

さらにはChatGPTのようなAIの台頭により、これからは美しい文章を書くのが人間だけでなく、AIにも可能になります。そのような状況の中、稚拙な文書を発信し続けることをためらいます。

AIが浸透していく今後は、間違っているくらいの方が、価値があるかもしれません。正しくてきれいな発信は感謝して AIに任せて、自分ならではのノイズをどんどん発信してください。文章力を磨いたり、新しいスキルを獲得したりするよりも、発信する勇気を持ったらいいのです。そうすれば、世界のどこかに、必ずそれを受け取ってくれる人がいます。あなたに共感して、好きになってくれる人が現れるのです。騙されたと思って、まだ見ぬ受け手の存在を信じてみてください。

AIに対して、技術や能力で人間が勝つことは難しいです。では、AIにはできなくて、人間にできることはなんなのか?それは、「その人ならではのノイズ( =自己表現)」を発信していくことです。どうして自己表現のことをノイズに例えたのかというと、人間は不完全なところも含めて完璧な存在だと考えているからです

上手い文章を書くことは、プロの作家やAIに任せればいい。とても励まされる考え方です。

私は、自分という人間を表現するのであるから稚拙な文章のままでいいし、そのような文章こそが自分を表現することになります。自分のことを表現できるのはプロの作家にもAIにも不可能なことであり自分にしかできないことです。

大事なのは、「発信する勇気」と「発信を継続すること」。

これらを忘れずに、「自分ならではのノイズ」を発信していこうと考えます。

続けていれば、必ずそれなりにはなれます。天才レベルになれるかどうかはわかりませんが、自分なりにうまくできる状態にはなれると思います。しばらく結果や反応がなくても、ひとまず「続けるだけ」でいい、気楽な選択肢を自分に与えてあげてくださいね。