税理士による良いサービスは3つの時間のバランスから 〜『珈琲の建設』オオヤミノル著 を読んで〜
税理士として「良いサービスを提供してお客様に喜んでいただきたい」そう思って日々取り組んでいます。
しかしこの「良いサービスとは具体的にどういうものなのだろうか」と考えると明確にすることが難しく、とりあえず「一生懸命頑張ること」が「良いサービス」になるものと考えて仕事に取り組んでいました。
そこで、税理士による「良いサービス」とはどういうものなのかを本書を通じて考えてみたいと思います。
美味しいコーヒーは大体において、考える時間と労働する時間、休む時間のバランスで出来ているもの。
本書では、「美味しいコーヒー」は「考える時間と労働する時間、休む時間のバランスで出来ている」と述べます。この「美味しいコーヒー」の条件は、税理士による「良いサービス」にも通じるものがあるのではないでしょうか。
つまり「良いサービス」を提供するには、「考える時間」、「労働する時間」、そして「休む時間」のバランスをとることが必要であると考えます。
では、バランスをとるべきこれら3つの時間が、税理士業においてはどのようなものであるのかを確認したいと思います。
考える時間
税理士は税金に関するプロであるから税務の知識が必要であり、さらには税法が毎年のように改正されるため常に新しい知識をインプットすることが必要です。
税務の知識をインプットをするために、書籍やweb、研修会、セミナーなど様々な媒体を通じてインプットすることに積極的に取り組んできました。
インプットで得た知識をもとにお客様の税務について考えていくことから、知識をインプットすることが本書でいう「考える時間」にあたります。
税理士として仕事をしていく上で「考える時間」を設けることが必要であることは疑いのない事実ですが、この「考える時間」に時間を使い過ぎてしまうというバランスの問題が生じます。
なぜなら、このインプットを通じて多くの税務の知識を吸収することは、達成感や満足感を得ることにつながるため、ついのめり込みがちです。
本来、サービスとはお客様にその価値を届けること、つまりアウトプットしてこそ完結します。
しかし、税務の知識をインプットすることで満足してしまい、インプット量に比べてお客様へアウトプットする量が少なくバランスが取れていない状態になるリスクがあります。
税務の知識をお客様にアウトプットしなければ、それはただ税務に詳しいだけの人であり、お客様のためにならず自己満足になってしまいます。
知識をつけても、それがお客様へのサービスに結び付かなかれば意味がないものです。
税理士という職業柄、税務知識のインプットが必要なものであるとはいえ、この「考える時間」に時間を使い過ぎていないかを意識する必要があります。
労働する時間
税理士はお客様に対して税務相談にのることや、試算表の作成提供、決算申告書の作成提出などのサービスを提供しています。これらのサービスをお客様に提供することが税理士にとっての主なサービスであり、これらのサービスに費やす時間のことが本書で言う「労働する時間」にあたります。
「考える時間」がインプットであるとしたら、「労働する時間」とはアウトプットであるといえます。
先ほど「考える時間」が自己満足に陥りこれに時間を使い過ぎてバランスを欠く可能性を指摘しましたが、「労働する時間」においてもバランスを欠く可能性があります。
なぜなら「労働する時間」は、お客様に直接サービスを提供する段階であるので、お客様の反応がダイレクトに返ってくる時間です。
それはサービスを提供する側からすると充実感や達成感を得られるもののため、没頭しすぎてしまう。
お客様から必要とされる充実感や達成感が得られることは税理士としてとても心地よいものです。しかし、心地よいがために、自分のキャパシティを超えてまで頑張りすぎてしまうリスクがあり、バランスを欠くことにつながります。
仕事をする上でお客様の期待に応えることは重要なことではありますが、自分のキャパシティを超えないよう「労働する時間」に時間を使い過ぎていないかを意識する必要があります。
休む時間
休むことは一見簡単なようで実は意外と難しいものであり、意識しないと「休む時間」が不足してしまう可能性があります。
例えば、3月の確定申告時期などの繁忙期では、やるべき仕事の量が多くやってもやっても仕事が終わらない感覚になります。そのため、休日であっても頭の中で仕事のことを考えたり、休日返上で仕事をしてしまうことがあります。
また、繁忙期ではなくとも、ふと時間に余裕ができると何か有意義な事をしなければと落ち着かない気持ちになり、せっかくの空いた時間を休むことに使わずに仕事をすることで埋めてしまいます。
はたして、休むことなく仕事をすることは、良いサービスにつながるのでしょうか?
確かに休むことなく仕事をすれば仕事をこなす量は増えますが、決して良いサービスを提供することにはつながりません。
休む時間がなければ、疲れからミスをする可能性が高まりますし、さらには心身を壊してしまうことさえ考えられます。このような状態で良いサービスを提供することなどできるはずがありません。
このような状態に陥らないよう意識して「休む時間」を確保する必要があります。
上記3点は仕事をしていく上でいずれも重要な要素です。
しかし先述した通り、これらのバランスを意識することなくやみくもに仕事を頑張るだけでは、バランスが取れず良いサービスにつながらないことが往々にしてあると思います。
「考える時間」、「労働する時間」、そして「休む時間」のバランスをとることこそが、お客様が真に喜ぶ良いサービス提供につながる。このことを意識して税理士業を取り組んでいきたい。