税理士に必要な知識の習得方法 〜『科学的根拠に基づく最高の勉強法』安川康介著 を読んで〜

税務や会計以外の知識の覚え方

何かを覚えようとしても心のどこかで自分に関係が無いと考えているものは覚えられないものです。

税理士として仕事をする上では、税務や会計に関する知識は何よりも優先して覚えるべきものです。そのため、開業当初から税務や会計に関する知識は自ら進んで覚えようとしてきました。一方で、それ以外の知識は税理士業には関係がなく自分には関係がないものと認識していたため、そのような知識に触れる機会があっても、心のどこかで自分に関係が無いものと考え進んで覚えようとしてきませんでした。

しかし、これまで税理士として仕事をしてきて感じるのは、一見すると税理士業とは関係がないと思われる税務や会計以外のことも大事であり税理士業に関係することが多いということです。つまり、税理士業をしていく上で無駄な知識は無いということを表します。

税理士はお客様の業務をいかに税務や会計に結びつけるかが求められる仕事です。お客様の業務を理解する上では、一見すると税理士業とは関係がないと思われる税務や会計以外の知識が重要になることがあります。

そのため、税務や会計のことしか知らないのではお客様の業務を税務や会計に結びつけることが難しくなり、適正な税務申告やお客様への業務効率化の提案などに支障が出ます。

よって、「税務や会計に関係がないものは税理士には関係がない知識だから覚えない」というスタンスでは、税理士として最適なサービスを提供できないことにつながります。

自分には関係がないものと決めつけるのではなく、何事にも自分に関連があるものと興味を持ち意味づけをして貪欲に覚えていくことが必要なのでしょう。

イーロン・マスクは、好き嫌いを別にして興味深い人物です。あるインタビューで、何かを学ぶうえで一番重要なことは何かと問われた際の彼の回答は、まさに自己関連づけ効果に言及しているものであり印象的でした。「何かを覚えるためには、それに意味を与えなければなりません。なぜこれが自分に関連があるのかを言ってください。なぜ、自分に関連があるのかを言えれば、おそらくそれを覚えるでしょう」

 

読書による知識習得への試み方

税理士として独立開業してからは自己研鑽のため意識して読書量を増やしています。しかし、読み終えてしばらくするとその内容が頭に残っていないことが多々あります。

せっかく時間を投資して読書してきたのだから内容を忘れてしまうのは勿体無いものです。そのため読書の知識の定着のために、数ヶ月前よりブログでアウトプットすることを試みています。

読書後にブログでアウトプットをすると、それをしない場合に比べて本の内容が頭に残ることを実感します。また、ブログにアウトプットすることは本書でいう「分散学習」に該当し記憶の定着に寄与することを知り、取り組みとしては正解なのだろうと思います。

しかし、ブログを書けば本の内容が完全に身につくかと言えばそうではなく、徐々に忘れていくことは防げません。人間忘れる生き物であるから忘れていくことは仕方がないものなのでしょう。

内容を忘れないための次の工夫としては「繰り返し」による知識習得を試みようと思います。

具体的には、これまでブログ投稿後の再読をしていなかったので、定期的に再読をしようと思います。その際に、本を頭から読み返すのでは時間がかかるため、本にアンダーラインを引いた箇所を中心に読み返していきます。

本の内容を忘れることは当然のことのため、そのことを受け入れた上で「本を読んで内容を覚えておきたい場合は、やはりアクティブリコールと間隔反復を取り入れる必要がある」という本書の指摘に沿ってより良い知識習得に挑戦したい。

アクティブリコールと分散学習は、入学試験や資格試験だけでなく、日常の学びにも役立ちます。例えば、ある本を読んで、1週間後にほとんど内容を覚えていないという方は多いのではないでしょうか。興味のある分野でない限り、一度本を読んだだけでは、記憶の定着が良くないのは当然のことです。たとえ同じ日に2回繰り返し読んだとしても、おそらく記憶の定着は良くないでしょう。本を読んで内容を覚えておきたい場合は、やはりアクティブリコールと間隔反復を取り入れる必要があると思います。具体的には、ある程度の情報のまとまりや章を読んだら、何が書いてあったのか思い出す、できれば書き出すという作業を行います。本に書いてある内容をフラッシュカードにしていく、というのも1つの方法で、僕もやることがあります。そして、翌日や1週間後に、その内容を再度思い出してみます。覚えていない情報があれば、再び本を参照します。この繰り返しにより、読書による知識習得も大きく改善するはずです。