税理士によるAIとの接し方 〜『読書が苦手だった司書が教える 世界一かんたんな図書館の使い方』つのだ由美こ著 を読んで〜

「発想力」と「伝達力」が求められている

税理士業務においてもChatGPTを活用することができるのではないかと導入してから2ヶ月が経ちます。

巷では、「ChatGPTを使って簡単に〇〇ができた」「ChatGPTが優秀なスタッフのように質問に答えてくれる」といったように、まるでChatGPTが魔法の道具であるかのような表現を目にします。

実際に使用して感じるのは、世間のいう耳障りのいい表現を鵜呑みには出来ないということ。そして、ChatGPTを使う人間側にとっては次に述べる2つのハードルがあり、このハードルを乗り越えるための鍛錬が必要であるということです。

第一のハードルとしては、ChatGPTを使って自分は何をしたいのか、ChatGPTに何をしてもらいたいのか、その「発想力」が必要であることです。当然のことですが、人間がChatGPTにアクションを起こさなければChatGPTは何もしてくれません。日々の税理士業務の中でChatGPTに問いかけるべき発想力がなければ、ChatGPTを導入していても何も起きません。ChatGPTを活用する発想力があってはじめてスタート地点に立つことができます。これまでChatGPTをはじめAIを活用する生き方をしてこなかった私たちにとって新しい思考や行動が必要になるので、いかにして「発想力」を鍛えるのかこのことを意識した思考や行動が第一に必要です。

第二のハードルとしては、ChatGPTへの「伝達力」が必要であることです。ChatGPTに指示を伝えるときに、人間の脳とChatGPTが繋がっているわけではないから、テキスト等を駆使して伝えていく必要があります。いかにChatGPTが優秀とはいっても人間とChatGPTとの間に阿吽の呼吸のようなものはないため、指示を伝えるには、前提条件等を丁寧に伝えていかなければ人間が求める対応をしてもらうことが困難です。著者の言うように『人間の場合は空気を読んだり、忖度したりもできますが、AIはできません。「察して欲しい」と望んでも伝わらないのです。今まで相手が人間だったので曖昧で済ませられたことが、AIには通用しなくなります。つまり、AIを使いこなすには、言葉を言い換える力(語彙力)がとても重要』です。AIを活用していくのであれば、これまで以上に、相手に自分のことを正確に伝える「伝達力」が必要です。

繰り返しになりますが、ChatGPTを導入さえすればなんら努力を要せず魔法が使えるようになるものではありません。私たち人間は「発想力」と「伝達力」を向上していくことではじめてAIの恩恵を受けられると考えます。AIを活用していくこれからの時代では、私たちはこれまで以上に自分を向上していくことが必要なのではと思います。

AIにいい回答をしてもらうには、人間側がAIにいい質問・指示をする必要があります。人間同士の会話とよく似ていますね。ただ、人間の場合は空気を読んだり、忖度したりもできますが、AIはできません。「察して欲しい」と望んでも伝わらないのです。今まで相手が人間だったので曖昧で済ませられたことが、AIには通用しなくなります。つまり、AIを使いこなすには、言葉を言い換える力(語彙力)がとても重要なので最初の質問で望む回答が得られないとき、もし言い換える力がないと、次にどうすればいいかわかりません。一方、言い換える力がある人は、キーワードを次々と換えて、別の視点からプロンプトを作ることや、Whyで深掘りしていくことができます。AIがあれば、読む・書く・考える必要がなくなると思われがちですが、本当は真逆。AIの時代こそ、読む・書く・考えることができる人のほうが有利なのです。もしAIを使いこなしたいなら、ハウツー的に「プロンプトにこう入力すれば回答が出る」と暗記するのではなく、自分自身の言葉の言い換え力をきたえることに意識を向けましょう。

 

これからの税理士は「AIを使いこなす人間」にならなければならない

「AIによって税理士業務は影響を受ける」と言われており、極端な例では「AIによって税理士の仕事がなくなる」と言われることもあります。AIが会計データを作成してくれるようになるのでしょうか?AIが申告書を作成してくれるようになるのでしょうか?AIが税務相談に答えてくれるようになるのでしょうか?これらのことは、100%実現しているとは言えない状況です。

現段階では人間がChatGPTなどのAIに指示をすることで初めてAIからのサポート受けられる状況であることからすると、著者の言うように『本当に「AIが仕事を奪う」のでしょうか?いいえ、奪うのは“AIを使いこなす人間”です。まずそこに気づくかどうかで、AIに対する得体の知れない不安感が変わります。AIはあくまで道具です。うまく使った人が今後の社会でも仕事を失いにくい』と言えます。

つまり、税理士にとって、AIが脅威なのではなく、「AIを使いこなせないこと」が脅威なのです。

税理士は、AIを自らの仕事を奪うものとして単に恐れるのではなく、AIを自らの業務に活用し使いこなすことを主眼において接していくことが何よりも求められていることであり、税理士とAIとのこれからの関係を考える上で最も正しい在り方なのではないかと考えます。

「AIに仕事を奪われる」は本当か?では逆に、人間にしかできないことは、いったい何でしょうか?「AIに仕事を奪われる」よくネットやテレビで聞きますよね。とても不安になる言葉です。ですが、本当に「AIが仕事を奪う」のでしょうか?いいえ、奪うのは“AIを使いこなす人間”です。まずそこに気づくかどうかで、AIに対する得体の知れない不安感が変わります。AIはあくまで道具です。うまく使った人が今後の社会でも仕事を失いにくいということ。パソコンがいい例です。つまりパソコンと同じように、AIを使いこなしている・理解している人の真似をすればいいのです。それは誰かというと、いちばんは開発側の人たちでしょう。