「英雄の書」に学ぶ、税理士の成長に必要な「孤高」の時間

税理士として開業すると、自分が責任者として業務を進めていくことになります。そのため、勤めていた頃のように組織の一員として存在するのではなく、独立したプロフェッショナルとして税理士業務をしていくものと考えていました。

しかし、人間ひとりでできることに限りがあり、税理士としての研鑽を積むにはひとりでは情報の収集能力などに限界を感じました。そこで、税理士である同業者との交流を深めることに挑戦しました。同業者と交流をすることで税務の知識や税理士事務所経営に関する考えなどひとりの経験では得られない知見を幅広く得ることができ、税理士間での「横のつながり」の大切さを実感しました。

このように人と繋がることで多くの得るものがありますが、その一方で、孤高である機会が少なくなりました。たとえば、SNSを活用して他の税理士と交流を持ち、他者の考え方や知識を得ることは有用ですが、その一方で、自分の思考を深める時間が減ります。

自分の思考を深める時間が減ると、それはつまり、独自の考えを持たずに他者の思考に丸ごと乗っかってしまう恐れもあります。

自分の思考を持たず他者の思考に委ねてしまうのであれば、自分の存在意義がなくなります。独自の考えを持たないのであれば、それは単に「情報を持っているだけの人」です。単に情報を集めるだけであれば、webで検索すれば良く自分でなくても良いのです。つまり、自分自身が「単なる情報収集者」になってはならないと考えます。

「単なる情報収集者」に留まることなく、独自の価値を提供する存在になり自分の存在意義を見出すにはどうしたら良いのでしょうか。

それにはやはり、孤高になることが必要です。しかしながら、先に述べたようにひとりには限界があり交流することの大切さも学んできました。

これらを踏まえると、自分の思考と他者の思考をバランスよくミックスしていくことが求められるのではないでしょうか。

そのためには、あえて今一度「孤高」になることを意識していかなければならないと考えます。

開業当初に「孤高」を目指し、そしてひとりの限界を越えるために税理士仲間との「交流」を深めました。さらに次の段階として今一度「孤高」を意識する時期にきていると考えます。

他者との交流をする経験を積んできたからこそ、これからは意識して孤高になることを目指す。交流することを知った上で孤高を意識することで、自分の思考と他者の思考バランスが取れる税理士になるのではないかと考えます。

これからは、他者と交流し調和を保ちながらも、独自の価値観を確立し、お客様に影響を与えることができる。そのような税理士を目指していこうと考えます。

 

本書(『英雄の書 すべての失敗は脳を成長させる』黒川伊保子著)ではこのように述べられています。

狐高は、英雄になる人たちが、おしなべて持っているセンスである。「そもそも自分は友達が少ない。“付き合い”の飲み会は、本当は苦手だ」という人は、生まれつきのヒーローセンスの持ち主だ。それでも、「絆」や「空気が読める」ことが尊重されすぎる現代では、なんとなく「そうしなきゃいけないような気がして」、周囲の「つるみ」に付き合うことになる。そこからは、今すぐ、一目散に逃げたほうがいい。

孤独は、怖いだろうか。しかし、英雄は、孤独を恐れてはいられない。その人にしかできないことがある、ということは、その人にしか見えないものがある、ということだ。存在価値の高い人ほど、誰とでも共感できるわけじゃない。逆に言えば、誰とでも共感していると、自分にしかできないものに出合えないし、道は拓けない。だから、安易な共感生活は危ない。

もちろん、人は社会的動物で、厳密には他人と連携しなければ生きていけない。しかし、一方で、脳は「孤高」の時間を持たないと、世界観が創れないのだ。自分が何者か知るには、この世を自分独自の世界観で眺めなければならない。与えられた、誰かのそれじゃなく。友達とつるむことを重要視するあげく、眠りにつく瞬間までSNSとつながっていては、世界観なんてとうていれない。長いものに巻かれ、付和雷同して生きて、その他大勢の一人として死んでいくことになる

あなたは、優等生になりたいのだろうか。優等生とは、予定調和の正しい答えがいち早く出せる人たちのことだ。誰もが思い描く納得の答えをすばやく出せたら、小さな組織で、ある一定期間だけはちやほやされるだろうが、いつまでも「あなたらしい答え」が見つけられなかったら、結局「その他大勢」に交ざってしまう。ほどなく、あなたの職場にもAIが登場するだろう。そうすれば、予定調和の正解を出すことなんてAIの役割になってしまう。定型タスクが激減する近未来では、「その他大勢」は存在することさえ許されなくなってしまう。この本を手にしたあなたは、もう「その他大勢」要員なんかじゃない。今日から孤高の時間を確保してください

かのスティーブ・ジョブズは、2005年スタンフォード大学の卒業式の講演で、こう言っている。 …皆の時間は限られているから誰か他の人の人生を生きることで時間を無駄にしてはいけない。教条主義の罠にはまってはならない。教条主義とは他の人々の思考の結果に従って生きることだ。他の人の意見という雑音に自分自身の内なる声をかき消されないようにしよう。そして最も重要なことは、自分の心と直感に従う勇気を持つことだ。心と直感は本当になりたい自分をどういうわけか既に知っている。その他すべてのことは二の次だ。