漱石に学ぶ税理士の心構え〜「私の個人主義」が教えるプロフェッショナルの道〜

夏目漱石の『私の個人主義』を読み、税理士業務における姿勢や在り方について深く考えさせられる一節がありました。漱石は著書の中で、職業や専門というものは、

「自分の需用以上その方面に働いてそうしてその自分に不要な部分を挙げて他の使用に供するのが目的であるから、自己を本位にしていえば当初から不必要でもあり、厭でもある事を強いて遣るという意味である。」

と述べています。

これは、税理士業務にも通じるものがあるのではないでしょうか。税理士は、お客様のニーズに応え、税務・会計の専門知識を提供することで、社会に貢献する職業です。しかし、時にはお客様の要望に応えるために、自分の得意ではない業務や、非効率な業務など本来やりたくない業務をこなさなければならないこともあります。

漱石はさらに、

「いやしくも道楽である間は自分に勝手な仕事を自分の適宜な分量でやるのだから面白いに違ないが、その道楽が職業と変化する刹那に今まで自己にあった権威が突然他人の手に移るから快楽がたちまち苦痛になるのは己を得ない。」

と述べています。

税理士業務も、最初は「税務・会計の専門家として社会に貢献したい」というある意味では道楽のような気持ちで始めるかもしれません。しかし、いざ職業となると、お客様の要望や申告期限等に追われ、自分のペースで仕事を進めることが難しくなります。

では、税理士はどのようにして、この「厭でもあること」を乗り越え、やりがいを見出せばよいのでしょうか。

漱石は、

「私はどんな社会でも理想なしに生存する社会は想像し得られないとまで言じているのです。」

と述べています。

税理士も、常に「お客様のために」「社会のために」という理想を持ち続けることが重要です。目の前の業務に追われるだけでなく、お客様の事業の発展や、お客様の幸福、社会全体の経済活性化に貢献するという大きな目標を持つことで、日々の業務に価値を見出すことができるのではないでしょうか。

さらに、漱石は、

「ああここにおれの進むべき道があった!ようやく掘り当てた!こういう感投詞を心の底から叫び出される時、あなたがたは始めて心を安んずる事が出来るのでしょう。」

と述べています。

税理士として、自分の専門性を活かし、お客様に真に喜ばれるサービスを提供できた時、大きな達成感と喜びを感じることができるはずです。そのような経験を積み重ねることで、自分自身の成長を実感し、税理士としてのさらなる高みを目指せるのではないでしょうか。

『私の個人主義』は、個人の自由と社会との調和を説いた書です。税理士も、個人の専門性を追求しながら、社会への貢献を意識することで、真のプロフェッショナルとして活躍できるのではないでしょうか。

「私は貴方がたが自由にあらん事を切望するものであります。同時に貴方がたが義務というものを納得せられん事を願って己まないのであります。こういう意味において、私は個人主義だと公言して憚らない積です。」

税理士としての自由と責任を自覚し、お客様と社会のために貢献できるよう、日々精進していきたい。