税理士の仕事は「人柄」が大切? 弁護士のミニマム経営に学ぶ自分らしい働き方

こんにちは、栃木の税理士伊沢です。

弁護士さんの「ミニマム経営」に関する書籍『工夫次第でここまで出来る!弁護士ミニマム経営のポイント』北周士編者を拝読しました。

私の事務所は、私と妻の二人で税理士事務所を営む「ミニマム経営」のため、共感できる部分が多いのではと思いこの本を手に取りました。本書の内容を一部引用しつつ税理士の仕事に活かせるヒントについて考えてみました。

お客様との関係を築く「自分」という商品価値

本書のなかで、ある弁護士さんは、ご自身の専門性はもちろん、人間性そのものが商品になると述べています。これは、税理士業にも当てはまることではないでしょうか。

「自分自身という商品の価値」を高める努力が、顧客獲得につながると考える方もいます。知識や経験はもちろん、人格や雰囲気、生き方そのものが商品になるという考え方です。

税務の専門知識があるのは、税理士として当然のことです。しかし、お客様が私たち税理士に依頼するのは、単に税金の計算や申告をしてほしいからだけではありません。会社の経営やご自身の人生設計について、安心して相談できる相手を求めていると感じます。

お客様との信頼関係を築くためには、専門家として「正しい」だけでなく、その人の人柄や考え方、生き方といった「人間性」が重要だと思います。お互いに心を開いて話を聞き、真摯に対応することで、お客様は「この税理士なら安心して任せられる」と感じてくださると考えます。

賢く選択する「何をしないか」の勇気

税理士の仕事は多岐にわたりますが、すべての依頼を受けることは物理的に不可能です。本書で、ある弁護士さんは、ミニマム経営を続ける上で「何をしないか」の取捨選択が非常に重要だと語っています。

ミニマム経営を効果的に行う上で、「何をしないか」の取捨選択は非常に重要です。限られたリソースの中で、全ての依頼や活動に対応することは不可能です。

無理にすべての依頼を受けると、一つの案件にかけられる時間が減り、お客様へのサービスの質が低下する可能性があります。それは、結果としてお客様へ迷惑をかけることになり自分の評判を下げることにもつながりかねません。例えば、慣れない分野の業務や、過度に工数がかかる割に報酬が低い業務を無理に引き受けていないでしょうか。

必要となりそうな労力に比べてあまりにも実入りが少なそうな事件等は、依頼をお断りせざるを得ないでしょう。

これは、税理士の仕事でも同じです。自分の強みや得意分野を明確にし、そこに集中することで、お客様に満足のいくサービスを提供できます。そして、お客様の期待に応えることで、さらなる信頼につながると思います。

自分の人生を生きるための「ミニマム経営」

ミニマム経営を続けている弁護士さんは、経済的な安定や自由を追求するだけでなく、何よりも「自分の性格や価値観に合っていること」を継続の大きな理由として挙げています。

「わがままな自分の性格に合っている」といった、ご自身の性格や価値観に合致していることがミニマム経営継続の大きな理由であるという声も複数ありました。

また、「仕事を増やすとプライベートの時間が減るリスクがある」と考えて、あえて仕事をセーブして、家族との時間やご自身の健康を最優先にしているという話も印象的でした。

私の優先順位は、自分を含む家族の健康と生活が第一で、仕事はそれを実現するための手段にすぎません。

仕事のために人生を犠牲にするのではなく、自分の人生を豊かにするための手段として仕事がある、という考え方。これは、私たち税理士にとっても改めて心に留めておくべき姿勢だと思います。

事務所の経営を安定させるヒント

ミニマム経営の維持には、経費のコントロールも欠かせません。

「売上げはコントロール出来ないが、経費はコントロール出来る」との言葉に大変感銘を受けました。この言葉がそれから現在までの座右の銘になっております。

売上を急激に増やすのは難しいですが、日々の経費を見直すことで、事務所経営は安定します。

また、ある弁護士さんは「顧問料で固定費を賄えているから、焦って売上を稼ぎに行く必要がない」と述べていました。これは、顧問業務が主軸になりやすい税理士業にとっても、重要な視点だと思います。

おわりに

「ミニマム経営」には決まった「正解」はありません。それぞれの弁護士さんが、ご自身の価値観に合わせて独自の経営スタイルを築いていることがよく分かりました。

ミニマム経営に1つの「正解」があるわけではなく、弁護士それぞれの個性や状況、価値観によって最適なスタイルが異なることを示唆しています。

この考え方は、税理士にも通じるものです。大切なのは、他の税理士のやり方をただ真似るのではなく、自分にとって最適な働き方を見つけること。そして、その働き方が、お客様への価値提供にもつながるよう、常に試行錯誤を続けることではないでしょうか。

この本を参考に、お客様に寄り添いながら、自分らしい税理士としての在り方をこれからも追求していきたいと思います。