「わかったつもり」から「わかろうとする」へ。傾聴で変わる税理士のコミュニケーション
「顧問先の経営課題について相談を受けたものの、的を射たアドバイスができたのだろうか」
「親身になって話を聞いているつもりだが、顧問先との距離が縮まらない気がする」
このような悩みはないでしょうか。
専門知識や的確なアドバイスを提供することはもちろん重要ですが、顧問先との信頼関係を築くためには、コミュニケーション能力、特に「傾聴力」が欠かせません。
コミュニケーションの本質を捉えた尹雄大氏の著書『聞くこと、話すこと。』を参考に、税理士業務における「傾聴」について考えてみたいと思います。
税理士が陥りがちな「わかったつもり」
人は相手の話を「その人の話」としてではなく、「自分の話」として聞きがちだ。自分の理解できる範囲の出来事を相手に見出しては「わかる」と言い、共感できないことはただちに「わからない」と判断する。わからなさを前にした途端、実際には口にしなくても、心の中で相手の話に対して「つまり・結局・要するに」を持ち出して解釈することに忙しい。その後に続くのは「だから良い・悪い」のジャッジだ。
尹雄大氏のこの言葉にドキッとしました。
税理士として、私は日々、顧問先から様々な相談を受けます。その内容は、経営課題、財務状況、税務に関することなど多岐にわたります。
これらの相談に対して、私は専門知識や過去の経験を基に、的確なアドバイスをすることが求められます。しかし、その過程で、知らず知らずのうちに「わかったつもり」になって、相手の話を自分の価値観で解釈したり、結論を急いでしまったりする傾向があるかもしれません。
特に、税務や会計に関する専門用語を多用したり、顧問先の状況を十分に理解しないまま、一般的な解決策を提示してしまうことは、「わかったつもり」の典型的な例と言えるでしょう。
傾聴とは?~「わかったつもり」から「わかろうとする」へ~
では、どのように顧問先の話を聞けば良いのでしょうか?
私にできるのは、傲慢にも相手の話の要約をすることでもなければ解釈でもない。まして完璧な理解ではないことだけはわかる。そのためインタビューセッションはジャッジをせず、ただ完全に聞く場であろうと定めている。「完全に聞く」とは相手を完璧に理解することではない。わかろうと試みる状態のことだ。
尹雄大氏は、傾聴とは「わかろうと試みる状態」だと述べています。
つまり、相手の話を自分の価値観で解釈したり、結論を急いだりせず、まずは相手の言葉にじっくりと耳を傾け、その言葉の奥にある感情や真意を理解しようと努めることが大切なのです。
これは、税理士業務においても同様です。顧問先の話を「わかったつもり」で聞くのではなく、「わかろうとする」姿勢で傾聴することで、初めて顧問先の真のニーズや課題が見えてくるのではないでしょうか。
傾聴力を高めるために
傾聴力を高めこれまでの私に不足している部分を補うため、顧問先の話を自分の価値観で評価したり、判断したりせず、まずはそのまま受け入れることを意識していこうと思います。
傾聴力を高めることで、顧問先の本音を引き出し、信頼関係を築き、質の高いサービスを提供できることを目指して、顧問先も税理士も、お互いがより良い未来を築くことができるようになればと思います。