ナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』を読んで

この本を読んだきっかけ

自己啓発書の古典的名著として紹介されていたのをきっかけに2年ほど前に購入しました。
読みはじめたものの、エピソード(リンカーンやフォード、エジソンなど)が自分には遠い過去の話に感じていまい、その世界に没頭できずに、数ページ読み進めては違う本を読み、また数ページ読み進めては違う本を読むというスローペースでの読書となりました。

 

一読した感想

最後まで読書ペースがつかめず、波に乗れないなか一読した感想としては、「一度読んだだけではもったいないから二度三度と定期的に読み返したい」と思いました。
読書中に個人的に重要と思うところや面白いと感じたところにマーカーを引いて読みすすめ、一読後、マーカーの数は215箇所にもなり、このマーカーの数からして、とても一読では消化できず、定期的な読み返しが必要なものと思いました。

 

人間の最も生産的な年代とは

私は現在40代になり、本書において述べられる「40代からが重要な年代である」旨の記載にとても勇気づけられます。
30代で税理士として独立し、現在独立から10年目となる中、「果たして自分は何かを成し遂げてこれただろうか、これまでにもっと出来ることがあったのではないか」と、ふと自問自答することがあります。そんな自分に本書は「焦ってはいけない、これからが重要な世代だ」とそっと背中を押してくれます。
また、『六〇代までが人間の最も生産的な年代である』のだから、これから先、二十数年もの間は、生産的であることに感謝し、希望と期待を持って過ごしたい。

 

成功を遂げた著名な人々を二万五〇〇〇人以上も分析した結果 、次のことがわかった 。すなわち 、四〇歳以前に成功した人はほとんどいないこと 。そして 、ほとんどの成功者が五〇歳を過ぎてから自らのペ ースを把握していること 、である 。この事実はあまりにも驚くべきことであった。

 

どの分野でも 、四〇歳を過ぎるまでに創造力を十分に発揮したという人はごく少ない 。普通の人が創造力を最大限に発揮できるのは 、通常 、四〇歳以降である 。これは数千人の人々を詳細に分析した結果 、明らかになったことである 。ただし 、偉大な発明 、発見につながるインスピレ ーションは若いときに出やすい 。

 

四〇歳以降になると 、それ以前に増して過去に蓄積されたあらゆる情報が相互に 、必要に応じて結びつく確率が当然のことだが高くなる 。どんなつまらない情報でも 、異質なもの同士の結びつきは 、新しいものを生み出す 。三〇歳の人は約一万一〇〇〇日を生きたことになる 。四〇歳ではこれが約一万五〇〇〇日となる 。創造力にとって 、歳月は大きな味方なのだ 。このことは 、四〇歳になるまでに失敗したことのある人や 、四〇歳を過ぎて自分を老人だと思い込んでいる人に勇気を与えることだろう 。もしあなたがまだその年代になっていないのなら 、四〇代から五〇代が人生の中で最も実りある年代なのだから 、恐怖と身震いでその年代のくるのを待つのではなく 、希望と期待を持って待つべきであろう 。

 

ヘンリー・フォードは四〇歳を過ぎるまでは成功のアテはなかった 。アンドリュー・カーネギーの努力が実り始めたのも四〇歳を過ぎてからであった 。ジェームス・J・ヒル 〔訳注 …アメリカの著名な実業家 、鉄道事業者 。一八三八〜一九一六 〕にいたっては 、四〇歳のときにはまだ電信のキーをたたいていたのであり 、彼が成功を収めたのは 、それからずっと後のことである 。アメリカの著名な実業家や銀行家の伝記は 、四〇代から六〇代までが人間の最も生産的な年代であるという事実に満ち満ちている 。

 

必要とされる税理士とは

税理士が保有する主な知識は「税務」の知識です。
税務の知識は、ネット検索やChatGPTを駆使すれば手に入るといえます。このような中、なぜお客様が税理士を必要としていただけるのか、そしてこれから先も税理士を必要としていただけるのかを考えることがあります。
このことに関するヒントを本書は示しています。お客様は税務の知識に対して報酬を支払っているのではなく、税理士が税務の知識に基づいてお客様のために行動を起こしたときに報酬をお支払いしていただけるものであるということ。
現在そして未来においてもお客様から必要とされる税理士になるには、税務の知識に基づいた行動をいかに起こせるかが重要であり、行動する限りはお客様から必要される存在であり続けると思います。

 

世間は 、その人の 「知識 」に対して報酬を支払っているのではない 。その人が知識に基づいて何かをやってくれたとき 、あるいは知識に基づいて他人に何かをやらせたときに報酬を支払うものなのだ 。単なる 「知識 」なら 、百科事典をひもとけばすぐわかることである 。さまざまなことをたくさん知っていればよいというものではない 。

 

一般的知識がどんなに豊かであっても 、また 、どんな広い分野にいきわたっていても 、富の蓄積にはあまり役に立たない 。大学では 、あらゆる分野での一般的知識を教えているが 、そこで教えている教授たちは 、それほど富を持っているとは言えない 。教授は知識を教えるプロではあっても 、その知識を体系化し 、活用する専門家ではないからだ 。知識は 、富を得るという明確な目標に向けて体系化し 、活用しなければ 、富の蓄積には結びつかないのだ 。この事実を十分に理解しないで 、知識は力だと信じている人が大勢いる 。知識が力になり得るのは 、知識が 、目標に向けた行動プランの中で活用されたときだけである 。知識のみを与えて 、その活用方法を教えないのは 、教育制度の欠陥かもしれない 。

 

彼自身がどれだけの知識を持っていたかどうかは 、この場合は重要な問題ではない 。大切なことは 、知識をどれだけ活かして使ったか 、ということである 。

 

安定するには冒険が必要

税理士として独立開業してから現在まで、安定を望まない日はありません。
税理士業務をする上で会計ソフトはとても重要なツールです。独立前に勤めていた事務所で使用していた会計ソフトに不満がなかったため、独立した際も他のソフトを検証することなく従来の会計ソフトを導入しました。これは使い慣れた会計ソフトを使い続けるという安定を意識した選択といえます。
数年が経ち、税理士業界の動向をさぐると、クラウド型の会計ソフトを活用した効率化の流れがある事を知りました。クラウド型の会計ソフトは、これまで長い間使用してきた従来の会計ソフトとは使用感が全く異なるため、これを本格的に導入するには習熟に至るまでの時間と労力を費やすことが予想できました。このような中、従来の会計ソフトからクラウド型の会計ソフトに移行したのですが、これはわたしにとっての冒険でした。
予想どおり、クラウド型の会計ソフト導入にはとても苦労し挫折しかけたことが多々ありました。しかし今となってはこの苦労から得られた恩恵は自分を成長させてくれたと実感しています。この冒険を経た成長により、私はお客様に提案できるサービスの幅が広がり、以前よりも安定した税理士業務ができるようになりました。
先述したとおり、私は安定を望みます。その安定を望むがゆえに冒険をし、その冒険の末にさらなる安定を得ることができたと思います。

 

安定というものは 、冒険 (あるいは何か新しい決断 )という名のニワトリが産んだタマゴであることを知るべきである 。そのタマゴが再び冒険あるいは新しい決断というニワトリとなり 、このニワトリがまた安定というタマゴを産む 、という形で人生は豊かに成長していくものなのだ 。