『ドラゴン桜』から学ぶ、お客様に寄り添う税理士の「真の価値」

こんにちは。栃木の税理士伊沢です。

今回は、『ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書2 「勉強」と「仕事」はどこでつながるのか』を読んで、税理士業務における姿勢や在り方に通じる言葉がたくさんあったので、ここで検討したいと思います。

「自分らしさ」の追求と「一生懸命生きる」こと

私たちはとかく「才能がないから」とか「自分には向いていない」などと考えてしまいがちです。しかし、本書でジャズシンガーの綾戸智恵さんが語る言葉は、そんな固定観念を打ち破ってくれます。

みんなの中には「自分には才能がない」と悩んでいる人もいるかもしれないね。正直言うと、わたしはピアノもそんなに上手じゃないし、歌だってうまくない。(中略)じゃあどうして、いまジャズシンガーとして活動できているかというと、”わたし自身”を表現しているからだと思う。こうやって生きてきた、綾戸智恵という人間をね。

これは税理士の仕事にもそのまま当てはまるのではないでしょうか。税務や会計の知識はもちろん大切ですが、それだけではお客様に真に寄り添うことはできません。「自分自身」を表現し、お客様に「この税理士だから相談したい」と思っていただける存在になること。そのためには、綾戸さんが言うように「わたし自身を表現」するため「一生懸命生きる」ことが何よりも大切だと感じます。

結局、なにが言いたいかというとね、大切なのは「一生懸命生きること」なのよ。生きていれば、表現するものの中にその人の人生が映し出されるの。一生懸命に生きていなかったら、なにも映らない。

日々の税理士業務を通じて、お客様の悩みや喜び、事業にかける情熱に触れる中で、自分自身の人生経験や価値観が、お客様へのサポートに深みを与えてくれるのではないかと思います。

「相手のため」に徹するプロ意識

本書では、プロとアマチュアの違いについて、下記のような言葉が述べられています。

プロとアマチュアの違いってどこにあると思う?僕の答えは簡単だよ。出発点が「自分のため」なのか「相手のため」なのかの違いさ。(中略)お客さんに感動を与えられるような存在になって、仕事を通じて「自分」を発見してほしい。

税理士の仕事は、まさに「相手のため」に徹するプロであるべきです。税金計算や申告書作成は、あくまでお客様の事業や人生をより良くするための手段です。お客様が何を求めているのか、何に困っているのかを深く理解し、その解決のために全力を尽くす。お客様に感動していただきその感動の中にこそ、税理士としての「自分」が生まれるのだと改めて強く感じました。

お仕事ってそういうこと。相手の気持ちをくみ取ることができれば、少しくらい料理がへたでも、豚カツが固くても、家族は喜んでくれる。音楽だって、お客さんの気持ちをくみ取ることができたら、少々リズムが悪くてもお客さんは喜んでくれる。

もちろん、税理士として「料理がへた」では困りますが、お客様の気持ちを汲み取り、共感する姿勢が何よりも大切だと実感します。

「価格」から「価値」への転換

この言葉は、「価値」という視点について深く考えさせられます。

僕は、モノを作っているんじゃなくって、お客様の「感動」を作り、「価値」を作っていきたいんだ。(中略)本当の価値というのは「時間に左右されないもの」のこと。

税理士業務においても、単に「税金計算をしてくれる」という「価格」としての価値提供に留まっていては、お客様に選ばれ続けることは難しいでしょう。税理士が目指すべきは、お客様の事業の成長や、お客様ご自身の「この税理士を選んで良かった」という「感動」や「価値」を提供することだと考えます。目先の節税だけでなく、お客様の長期的なビジョンに寄り添い、未来を見据えたサポートを提供することで、「時間に左右されない」真の価値を生み出すことができるのではないかと考えます。

「クール脳」と「ウェット脳」のバランス

本書で語られる「クール脳」と「ウェット脳」の話は、税理士の仕事における判断の重要性を再認識させてくれます。

科学は「How?」には答えられるけれど、「Why?」には答えられない。

税務の世界は、まさに「クール脳」が求められる世界です。法律に基づき、客観的な事実を積み重ね、合理的な判断を下す。これは税理士として不可欠な能力です。しかし、それだけではお客様の「なぜ?」という疑問や、複雑な感情に寄り添うことはできません。

そこで占いは、客観よりも主観を大事にします。個人の持つ心、体験、そして感情。こうしたウェットなものを重視するのが占いです。科学のクール脳に対してこれを「ウェット脳」と呼ぶことにしましょう。

お客様の抱える「なぜ?」に耳を傾け、その背景にある想いや感情を理解する「ウェット脳」もまた、税理士には必要不可欠です。クールな税務判断と、ウェットな人間的な共感、この二つのバランスがとれてこそ、お客様にとって真に頼れる存在になれるのだと思います。

「モヤモヤ」をチャンスに捉える

「モヤモヤ」に関する記述は、私自身の仕事への姿勢にも通じるものがあります。

悩んだり、がっかりしたり、心にモヤモヤがあったりするのは、自分の人生を好転させる大チャンスなんだと考えてください。いちばんよくないのは、「どうせ僕は」とあきらめてしまうこと。希望や可能性を自分の手で捨ててしまうこと。

税務の世界は常に変化し、新しい課題が次々と生まれてきます。時には複雑な案件に直面し、「どうすれば良いのか」と頭を悩ませることも少なくありません。しかし、そんな「モヤモヤ」こそが、新たな知識を習得し、解決策を探し、自身の成長へと繋がるチャンスなのだと、この文章を読んで改めて感じました。

お客様の「モヤモヤ」を解決することが私たちの仕事であり、その過程で私たち自身も成長する。そう信じて、これからもお客様のために、そして「自分らしさ」を追求するために、一生懸命「生きる」税理士でありたいと思います。