「会うとなんだか元気が湧く」と言われる税理士であるために。私が「自分のケア」を最優先にする理由

こんにちは、栃木の税理士伊沢です。
『あいては人か 話が通じないときワニかもしれません』(レーナ・スコーグホルム著)という本を読みました。脳科学と心理学に基づいたコミュニケーションの本なのですが、読み進めるうちに、「これは税理士がお客様と向き合う際の姿勢そのものではないか」と強く感じる言葉がたくさんありました。この本にある文章を引用しつつ税理士として、お客様とどのような姿勢で関わっていくべきかを考えていきたいと思います。
最高のサービスのために、まずは「自分」を整える
税理士が「お客様のために」と奔走することは素晴らしいことだと思います。しかし、自分自身が疲れ切って心に余裕がない状態では、お客様に最善のアドバイスができるでしょうか?
著書にはこのように書かれています。
かつてガンジーは言った。「私たちが他者を気づかう場合、それは先を見越した利己主義だ」私は、こう言いたいー自分のことを考える場合、それは先を見越した利他主義だ。つまり、自分をケアしてはじめて他者を思いやれる。私は自分の心の状態が良好だと、ごく自然に他者のためになる行動がとれる。(中略) 心の状態がよくないと、たとえ自分の気持ちに蓋をして他者に尽くそうとしても、決して長くは続かないし、結局は他者のためにもならない。
税務判断には冷静な頭脳が必要ですし、経営相談には柔軟な発想(本書でいう「お日さま脳」)が必要です。 税理士がプロとして常に心身を安定させ、ポジティブなエネルギーを持っていること。それが結果として、お客様へ質の高いサービスの提供につながるのだと再認識しました。
「伊沢さんに会うとなんだか元気が湧いてくるね」 そう言っていただける存在であるよう、まずは私自身が良いコンディションを保つことを心掛けていきたいです。
「私」を主語にして、信頼関係を守る
税理士という仕事柄、時として耳の痛いことを申し上げたり、期限について厳しくお願いしたりしなければならない場面があります。 本書では、相手を責めずに要望を伝える技術として、「私(I message)」を主語にすることを推奨しています。
相手を主語にするのではなく、自分を主語にしよう。つまり「私」の立場で語るのだ。これなら「攻撃」ではなく、「情報」として受け取ってもらえる。(中略) 「時間ぎりぎりだと落ち着いて仕事ができないんだ。だから、時間どおりにはじめられると助かるんだが」つまり「私」にとって必要なものは何か、「私」が求めるものは何かという視点で話すのだ。
たとえば、資料の提出が遅れているお客様に対して、「(あなたは)なぜまだ出せないのでしょうか?」と言うと、相手であるお客様は責められたと感じて心を閉ざしてしまうかもしれません(本書でいう「ワニ脳」の防衛反応です)。
そうではなく、 「期日までに資料をいただけると、(私は)じっくりと対策を練る時間が確保できて安心なんです」 とお伝えする。これなら、攻撃ではなく「より良い仕事をするための提案」として受け取っていただけるのではないでしょうか。
こちらが相手の側に踏み込んで、「あなたは〇〇だ」という言い方をすると、バランスは崩れる。(中略) シーソーを思い浮かべてほしい。シーソーで遊ぶには、自分は自分の側に、相手は相手の側にとどまらなければならない。
お客様と税理士は、まさにシーソーのような関係性です。お互いの領域を尊重し、適切な距離感を保ちながら、同じ目標に向かってバランスを取り合う関係でありたいと考えています。
「お日さま脳」で未来のチャンスを見る
経営にはトラブルがつきものです。しかし、ネガティブな感情に支配されると、解決策は見えなくなってしまいます。 本書では、脳の状態を良く保つことで、問題の中にある好機(チャンス)を見つけられると説いています。
悲観主義者は、あらゆる好機のなかに問題を見いだす。 楽観主義者は、あらゆる問題のなかに好機を見いだす。 (ウィンストン・チャーチル)
このことから、お客様と面談をする際は、単に数字のチェックや報告をするだけでなく、お客様の脳が「お日さま脳(ポジティブなシステム)」になれるような対話を心がけていこうと思います。 不安な時こそ、一緒に「どうすればうまくいくか」「このピンチにはどんなチャンスが隠れているか」を考えていけるような存在でありたいです。
おわりに
あなたの人生でいちばん大切なのはあなたなのだ。あなたは一生涯続く唯一の人間関係を手にしている。それは、あなた自身との関係だ。
お客様ご自身が、ご自分を大切にし、エネルギーに満ちていること。それが会社の繁栄にも直結すると思います。私は税理士として、税務や会計の面からお客様を支えるとともに、お会いすると少し心が軽くなるような、そんな「エネルギーを与えられるパートナー」でありたいと願っています。

