税理士が考える「本当の豊かさ」とは?〜ホセ・ムヒカの言葉に学ぶ生き方〜

こんにちは、栃木の税理士伊沢です。

著書『世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉』を読んで、税理士としての在り方やお客様との向き合い方について、深く考えさせられた言葉がいくつもありましたので、そのことについて考えてみたいと思います。

「本当の豊かさ」とは何か?

「世界でもっとも貧しい大統領」として知られるウルグアイの元大統領、ホセ・ムヒカ氏。彼の言葉は、私たち現代人が当たり前だと思っている価値観に、問いを投げかけます。

貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ

この言葉は、「豊かさ」の概念を根底から揺さぶります。私を含め大半の人は、より多くの収入を得て、より高価な物を手に入れることが「豊かになること」だという価値観ではないでしょうか。しかし、ムヒカ氏は、際限のない物欲にとらわれている状態こそが「貧しい」のだと指摘します。

これは、税理士の仕事にも通じる部分があるのではないでしょうか。お客様の事業の成長をサポートすることは、もちろん大切な業務です。しかし、ただ単に売上や利益を増やすことだけが、お客様にとっての「豊かさ」なのでしょうか。

お客様との決算の打ち合わせでは、前期と比較して当期の売上や利益の増減に目がいきがちです。シンプルに表現すると、売上げや利益が増えているなら「よかったですね!この調子で行きましょう」という話になり、売上げや利益が減少しているなら「原因を検討し、改善していきましょう」という話になります。

繰り返しとなりますが、果たして単に売上や利益を増やすことだけが、お客様にとっての「豊かさ」なのか、今一度立ち止まって、お客様と共に考える必要があると思います。

「自由な時間」を奪う消費社会

ムヒカ氏は、現代の消費社会が私たちから最も大切なものを奪っていると指摘します。

人がものを買うときは、お金で買ってはいない。そのお金を貯めるために割いた人生の時間で買っているのです

高価な物を手に入れるために、私たちは多くの時間を労働に費やします。ローンを組んで車や家を買えば、その返済のためにさらに長く働かなければなりません。ムヒカ氏は、このような生活を「不自由」だと表現しています。

お客様が設備投資を検討しているときに、本当にそれが必要なのか、それはお客様にとって「不自由」をもたらす可能性はないかと、税理士という外部の目線からお客様に問うことが大事なことなのかもしれません。

自分の人生の時間を、好きなことに使っているときが、本当に自由なときなのです。

税理士の仕事は、お客様の「人生の時間」を増やすことにもつながると考えています。煩雑な経理業務や税務申告のサポートをすることで、お客様は、本来の事業活動や家族との時間、趣味の時間など、ご自身の好きなことに集中できます。ただ単に数字を扱うだけでなく、お客様の人生全体を豊かにするためのサポートをするという意識を、改めて持つことが大切だと感じました。

「足ることを知る」という生き方

ムヒカ氏の言葉の中には、日本古来の精神である「足ることを知る」に通じるものがあります。

物を持つことで人生を複雑にするより、私には、好きなことができる自由な時間のほうが大切です。

「もっと、もっと」と物欲を追い求めるのではなく、必要最低限のもので満足し、その分生まれた時間を大切にする。この考え方は、お客様の事業経営にも応用できるのではないでしょうか。

不必要な投資や過剰な在庫は、事業の資金繰りを圧迫し、経営を複雑にします。本当に必要なものを見極め、シンプルで効率的な経営を行うことで、本業に集中できる時間が増え、結果的に事業の持続的な成長につながると考えます。

おわりに

ムヒカ氏の言葉は、税理士として、また一人の人間として、心に響きました。お客様の「本当の豊かさ」をサポートする税理士として、ただお金や数字を追い求めるのではなく、お客様が本当に大切にしたい「人生の時間」を増やす手助けをしたい。そのために、これからもお客様と真摯に向き合っていくことの重要さを改めて感じました。