『松浦弥太郎のきほん』から学ぶ、税理士としての在り方

松浦弥太郎さんの著書『松浦弥太郎のきほん』を読みました。日々の暮らしや仕事に対する姿勢、考え方について書かれたエッセイ集ですが、税理士業務にも通じるところがあると感じました。

特に印象に残った箇所をいくつか引用しながら、税理士業務における姿勢や在り方について考えてみたいと思います。

常に「大丈夫」という安心感を与える

父の言葉でいちばん好きだったのは「大丈夫」という言葉だ。父の「大丈夫」という声と言葉が、ぼくにとって何よりも嬉しいことだった。

税理士業務においても、お客様に安心感を与えることは非常に重要です。

わからないものに対して人はとても不安な気持ちになります。そのわからないもののひとつに税金が挙げられます。税金についてはわからないからといって無関心でいることは難しく、特に商売や相続などの場面において税金が身近なものとなります。

このような時に税金に関する悩みや不安を抱えているお客様に対して、「大丈夫」と寄り添う姿勢を持つことで、安心していただくことが税理士に求められます。

とばし読みの精神で全体像を掴む

とばし読みをしてはいけないと、一度も叱られたことはなく、「すごいね」と逆にほめられた。とばし読みとは、わからないところは気にせずに、どんどん読み進むことだ(中略)わからないものの中から、ほんの少しのわかるものを手がかりにして、大人顔負けのものがたりにだって深く入り込んでいくちからがある。

複雑な税法や会計処理に直面した時、細部にこだわって立ち止まってしまうことがあります。

しかし、まずは全体像を掴むために、「とばし読み」の精神で進めていくことも大切です。全体像を把握することで、細部の理解も深まります。

深呼吸で冷静さを保つ

生きるということはけっして楽ではない。楽でないとき人の呼吸は乱れる。呼吸が乱れると人は苦しくなる。けれども、呼吸を終えれば大抵のことはうまくいく。

税理士業務は、締め切りに追われたり、難しい問題に直面したりと、ストレスを感じやすい仕事です。そんな時こそ、深呼吸をして冷静さを保つことが重要です。落ち着いて状況を整理することで、より良い解決策を見出すことを目指していきたい。

ひとつを大切に、調和を生み出す

美しさとは調和であり、その調和とは常に「ひとつ」からはじまる組み合わせである。

業務効率化や節税対策、業績予想など、税理士業務ではお客様から様々な要素が求められます。

これらの要素を調和させるためには、まず「ひとつ」の軸となるものを定めることが重要です。例えば、「お客様との信頼関係」を軸に据え、それに付随する要素を組み立てていくことで、業務全体が調和のとれたものになります。

後味の良い仕事を目指す

仕事も暮らしも人間関係についても、後味のよさは大切だと思う。自分のまごころを、いつまでも人の心に残せることができたら嬉しい。

税理士業務は、単に数字を処理するだけでなく、お客様の人生に深く関わる仕事です。

目の前の業務だけでなく、長期的な視点でお客様との関係を築き、後味の良い仕事を心がけたいと考えます。

空間を意識し、シンプルに

何はともあれ、ものがたくさんあるよりも、空間が広いほうが、今はゆたかさを感じる時代ではなかろうか。

情報過多の時代において、必要な情報を取捨選択し、整理する能力が求められます。

税務に関する情報も同様で、毎年のように改正がある税制を事細かく説明するよりも、お客様にとって本当に必要な情報だけを分かりやすく提供することで、より良いコミュニケーションを図ることができ、お客様に喜んでいただけることにつながると思います。

日々の小さな幸せを味わう

日々というのは、心から味わうこと、すなわち向き合うことであり、その中から小さなしあわせをひとつひとつ数えることではないかと思っている。

日々の業務の中で、小さな成功体験や喜びを見つけることで、仕事へのモチベーションを維持することができます。

些細なことにも感謝し、日々の小さな幸せを積み重ねていくことが、充実した税理士としての人生につながるのではないでしょうか。

まとめ

『松浦弥太郎のきほん』は、税理士業務だけでなく、人生全般に通じる教訓が詰まった一冊です。松浦さんの言葉から、自分自身の「きほん」を見つめ直し、より良い仕事、より良い人生を築いていきたいと感じました。