『ハイパワー・マーケティング』から学ぶ税理士としての姿勢と在り方

ジェイ・エイブラハム氏の著書『ハイパワー・マーケティング』を読みました。この本は、ビジネスの成長戦略、お客様との関係構築、そして自己変革に至るまで、多岐にわたる重要な要素を網羅しており、業種を問わず多くのビジネスパーソンにとって参考となる書だと思います。

特に、中小企業の経営者や個人事業主にとって、この本はまさに羅針盤のような存在です。限られた資源を最大限に活用し、競争の激しい市場で生き残るための知恵と戦略が凝縮されています。

この『ハイパワー・マーケティング』から、特に税理士業務における姿勢や在り方について焦点を当て、その内容を深掘りしながら考察していきたいと思います。

ビジネスを成長させるための3つの鍵

ビジネスを大きくする方法は3つしかない。
1.クライアント数の増加
2.平均クライアント単価の向上
3.購買頻度の増加

ジェイ・エイブラハムは、ビジネスを成長させるためには、この3つの要素に注力することが不可欠であると説いています。税理士業務においても、顧問先の数を増やし、顧問料を上げ、スポット業務などの依頼を増やすことは、まさにこの3つの鍵に直結する施策と言えるでしょう。

しかしながら、この視点はいかにビジネスを大きくするかに主眼が置かれており、あえてビジネスを大きくせずに充実した働き方や生き方に注力している現在の私の考えとは必ずしも一致するものではありません。自分とは相反する考えに触れることで自分の考えをさらに深く考察することができました。

他業種の成功事例から学ぶイノベーション

多くの人が一生をほぼ1つの本業または1つの業界で送ってきた。(中略)あなたが競争相手と同じ方法で行う限り、少しずつ収入を増やしていくのが関の山だろう。(中略)数百もの業種で成功を実現させた基本原理を学べば、最も強力で効果的な、最先端の画期的なアプローチを見出し、あなたの業界に取り入れることができるだろう。

税理士業界もまた、例外ではありません。他の士業やコンサルタント、あるいは全く異なる業種の成功事例を参考に、新しいサービスやビジネスモデルを開発する姿勢が重要です。例えば、IT技術を活用した新しい会計サービスや、経営コンサルティングを付加した顧問サービスなどが考えられます。

お客様は単なる顧客ではない、かけがえのないパートナー

あなたはクライアントを、かけがえのない大切な友人だと考えるべきだ。(中略)これは「卓越の戦略」の核心であり、あなたとクライアントにとって実りが多く、利益をもたらす関係を長く続けるために不可欠なものなのだ。

税理士にとって、お客様は単なる数字の羅列ではありません。経営者としての悩みや課題を共有し、共に成長を目指すパートナーとしての意識を持つことが重要です。そのためには、お客様とのコミュニケーションを密にし、信頼関係を築くことがなによりも不可欠です。

USP(ユニーク・セリング・プロポジション)の重要性

商品やサービスを変更する必要はないが、商品やサービスを、クライアントが競合他社からは得られないユニークな恩恵として位置づける必要はある。(中略)あなたがUSPを決めると、人々にはあなたに接触するきっかけができる。

競争の激しい税理士業界において、USPは自社の存在意義を示す上で非常に重要な要素です。例えば、「相続税対策に特化した税理士事務所」、「ITに強い税理士事務所」、「新設法人に特化した税理士事務所」など、自分の強みを明確に打ち出すことで、ターゲットとする顧客層に響くメッセージを発信することができます。

最終結果を意識した付加価値の提供

クライアントは商品やサービスを購入しているのではなく、最終結果を購入しているのだという事実は見過ごされがちだ。(中略)クライアントが望む最終結果を常に念頭に置けば、クライアントがその最終結果をより完璧に、より便利に、より効率良く達成するのに役立つ商品やサービスを追加できるだろう。

お客様が税理士に求めるものは、単なる税務や会計処理だけではありません。お客様は事業の成長そして成功といった最終結果を求めています。

その最終結果を意識すれば、税理士が単なる税務や会計処理だけをすれば良いといった考えにはならないのではないでしょうか。税理士はお客様の最終結果を達成するよう伴走することが求められていると思います。税理士は、お客様のニーズを的確に捉え、それに応じた高いサービスを意識し追い求める必要があります。

継続的なコミュニケーションの重要性

重要なのは販売したあとのフォローアップだ。(中略)クライアントは大切なビジネスパートナーであり、その幸福と成功は、あなたの幸福と成功に直接結びついていると考えよう。

お客様との関係は、一度の取引で終わるものではありません。継続的なコミュニケーションを通じて、信頼関係を深め、長期的なパートナーシップを築くことが重要です。定期的な訪問や情報提供、そして相談しやすい雰囲気づくりなど、様々な工夫を通じて、お客様との絆を深めていく必要があります。

まとめ

『ハイパワー・マーケティング』は、税理士業務における姿勢や在り方を見直す上で、非常に示唆に富む書籍です。

本書で紹介されている様々な戦略や考え方を「自分なりにアレンジ」して実践することで、顧問先との関係をより良好にし、税理士としての価値を高めていきたいと思います。