税理士業務の「醍醐味」とは ~料理本から学ぶ効率化と顧客満足度について~

書籍『最初に読む料理本』の中で、著者の古谷暢康さんが述べているこの言葉が心に響きました。

無駄は省くが、手間はかける

料理における食材選びや調理方法と同じように、税理士業務にも当てはまる考え方だと感じ、この言葉から得た気づきを基に、税理士業務における効率化と顧客満足度向上について考えてみたいと思います。

税理士業務における「常識」を見直す

古谷さんは、

世の中で”常識”とされていることには、無駄が多い。常識とは、誰かさんの都合で作られたもの。何も考えずに、自分に当てはめていいのだろうか。

と述べており、料理における「常識」を疑い、本当に必要なことを見極めることの重要性を説いています。

税理士業務においても、従来のやり方が本当に最適なのか、改めて問い直す必要があるのではないでしょうか。

例えば、従来の会計帳簿作成方法や業務フローは、本当に効率的なのだろうか?ITサービスやAIを導入することで、より効率化できる部分はないだろうか?お客様とのコミュニケーション方法を見直し、より円滑な情報共有や意思疎通ができる方法はないだろうか?会計ソフト会社がおすすめするツールを導入することで本当に効率化するのだろうか?
など、固定観念にとらわれず、常に改善の余地を探ることが大切です。

「無駄」を省く

古谷さんは、

サラダや和えもので、野菜を手早く、薄く、細く切りたいときは包丁にこだわる必要はない。スライサーを使ったほうが、手っ取り早く、きれいにできる。

と述べています。

料理において、スライサーを活用することで野菜を効率的に切ることができるように、税理士業務においても、ツールやテクノロジーを積極的に活用することで、無駄な作業を削減することができるのではないでしょうか。

例えば、会計ソフトや税務申告ソフトを活用し、手作業による計算や入力ミスを減らすことはもちろんのこと、クラウドストレージを活用し、お客様との書類の保管や共有を効率する、税務申告書類などを印刷しファイリングしたものをお客様に渡すのではなくデータで提供するなど、最新のテクノロジーを積極的に取り入れることで、より多くの時間をお客様とのコミュニケーションやご相談対応に充てることができます。

「手間」をかける

古谷さんは、無駄を省いた分、

野菜の表面についた水はしっかり切る。もし、少ししなびた野菜なら、切ってから水に放ってシャキッとさせる。シャキッとしたあとで、水切りをしっかりする。調味したときに、味が薄まらないようにするためだ。

と述べているように、本当に必要なことには手間をかけるべきだとおっしゃっています。

税理士業務においても、前述したように無駄を省き、その上でお客様一人ひとりの状況やニーズを深く理解し、丁寧に対応することに時間を使いたいものです。

例えば、お客様の事業内容や将来の展望をしっかりとヒアリングし、最適な税務戦略や経営アドバイスを提供することを試みることや、税務に関する専門知識だけでなく、お客様の業界動向や経営課題、最新のITツールについても積極的に学びお客様のビジネス成長をサポートすること、お客様との定期的なコミュニケーションを大切にし信頼関係の構築を目指すことなど、お客様との深くより良い信頼関係を築くことで、長期的なサポートにつながるのではないでしょうか。

「いま忙しい」が招く将来

古谷さんは、

”いま忙しい”という理由で削っている料理の時間は、将来の”命の時間”なのかもしれません。

と警鐘を鳴らしています。

税理士業務においても、「いま忙しい」を理由に顧客対応がおろそかになったり、自己研鑽を怠ったりすることは、将来の顧客離れや業務の質の低下につながる可能性があります。

目の前の業務に追われるだけでなく、長期的な視点を持って、顧客満足度向上や自己成長のための時間もしっかりと確保していきたいものです。

まとめ

常識にとらわれず、本当に必要なことを組み立てる。無駄は省き、手間は惜しまない。そのメリハリが、料理の面白さであり、醍醐味でもある

古谷さんの「無駄は省くが、手間はかける」という言葉は、税理士業務にも通じる大切な考え方です。

従来のやり方を見直し、積極的に新しいツールやテクノロジーを取り入れることで、業務効率化を図っていく。そして効率化によって生まれた時間を、お客様とのコミュニケーションや自己研鑽に充て、顧客満足度向上と自身の成長を目指します。また、目先の忙しさに追われることなく、長期的な視点を持って業務に取り組み、お客様との信頼関係を築いていきたい。これらのことを実践することが税理士業務の面白さであり、醍醐味でもあると思います。