税理士こそ『聞き上手』であれ!「聞く技術」から学ぶお客様との信頼関係構築
税理士の仕事は、税務や会計の専門知識を提供するだけでなく、お客様の悩みや不安に寄り添い、信頼関係を築くことが不可欠です。そこで東山紘久氏の著書『プロカウンセラーの聞く技術』から、税理士業務に活かせる「聞く技術」について考えてみたいと思います。
「聞き上手」とは何か?
東山氏は著書の中で、「聞き上手」について下記のように問いかけます。
人びとはどうして「聞き上手」になりたいのでしょう。この問いを、この本を読みながらでもいいですし、読んだあとでもいいですから考えてみてください。それが「聞き上手」になりたいという、あなた自身の動機づけになります。もし、あなたが人の話を聞けなくなったり、聞きたくなくなったときには、この問いにもう一度帰ってみてください。なんらかのヒントがつかめると思います。
税理士が「聞き上手」になる理由は、お客様のニーズを正確に把握し、適切なアドバイスを提供するためです。また、お客様との信頼関係を築き、長期的なパートナーシップを築くためでもあります。よって、税理士として仕事をする上では「聞き上手」であることが求められていると思います。
なぜ「聞く」ことが大切なのか?
東山氏は、「沈黙は金、雄弁は銀」「言多きは品少なし」「一度語る前に二度聞け」など、古くから伝わる言葉を引用し、「聞く」ことの大切さを強調します。
「沈黙は金、雄弁は銀」「言多きは品少なし」「一度語る前に二度聞け」など、しゃべることよりも、聞くことの大切さが世間一般では強調されています。仏像を見ると、耳が大きく口の小さい像が、圧倒的に多いのがわかります。つまり、神仏はわれわれの願いを聞いてくれる存在なのです。同じように多弁な聖者はあまりいません。聖者は、己を人にわからせる必要がないからです。カリスマ性はあるかもしれませんが、少なくとも私には、多弁な聖者は信じられません。
お客様を目の前にすると、つい話さなきゃ、伝えなきゃという気持ちになりますが、税理士は、話すことよりもお客様の話に耳を傾け、その真意を理解することに努めるべきなのでしょう。
「聞く」ことは「理解」すること
東山氏は、「聞く」とはただ漠然と耳に入れることではなく、相手を理解することだと述べています。
われわれは、真実の人間関係、嘘のない人間関係、信頼のできる人間関係をもちたいとつねづね思っています。そのためには、相手の話を聞くことが必要になります。「聞く」ということは、ただ漠然と耳に入れることではありません。聞くことは理解することなのです。音や言葉を聞くことは簡単ですが、相手を理解することはむずかしいことです。
税理士は、お客様の言葉だけでなく、その背景にあるお客様の思いや状況を理解することで的確な税務サポートができると思います。そのため税理士は単に「聞く」ではなく「理解」しようと努める必要があります。
「聞き上手」になるための具体的な方法
東山氏は、著書の中で「聞き上手」になるための具体的な方法をいくつか紹介しています。
- 相づちを打つ
プロの聞き手は、相づちをふつうの人よりもひんぱんに使う意味がおわかりになったと思います。あなたも聞き上手になるために、相づちの練習をしてみてください。
税理士も、お客様の話に積極的に耳を傾けていることを示すために、適切な相づちを打つことが大切です。相づちすることを意識して「聞き上手」でありたい。
- 相手の言葉を繰り返す
くり返しの相づちは、「明快に」「短く」「要点をつかんで」「相手の使った言葉で」というのが大切なポイントです
お客様の言葉を繰り返すことで、理解を深めるとともに、お客様に安心感を与えることができます。ただし単に繰り返すだけではないところが難しいところではあるのですが、大切なポイントとして意識したい。
- 自分の意見を挟まない
プロの聞き手であるカウンセラーには、自他の区別が要求されます。相手の話を聞くときには自分の意見は出さず、相手の気持ちを肯定しながら聞いているのです。
話を聞いていると、つい「自分だったらこう考える」といった自分の意見を伝えがちです。これはお客様に真剣に向き合っているからこそ意見を伝えようとするものなのですが、 税理士は、お客様の話を遮ったり、自分の意見を押し付けたりせず、まずはお客様の話にじっくりと耳を傾けることが大切です。
- 質問する際は意図を明確にする
「きく」という日本語には、LISTENつまり「聞く」という意味と、ASK「たずねる(質問する)」という意味が含まれています。「よく聞いてください」と言われた人が、相手の話を聞かずに質問ばかりしていることがありますが、聞き上手とは、LISTENすることで、ASKすることではありません。
お客様のことを理解するために聞こうとするものの、それが「聞く」ではなく「質問」になっており質問攻めになってしまうことがあります。質問攻めにすることは、お客様に尋問されているような印象を与えてしまうことがあります。お客様に質問をする際には、その意図を明確にし、お客様が答えやすいように配慮することが重要です。
税理士業務における「聞く技術」の重要性
税理士は、お客様の経営状況や将来の目標について深く理解する必要があります。そのためには、お客様との信頼関係を築き、お客様が安心して話せる環境を作ることが不可欠です。「聞く技術」を磨くことで、お客様のニーズを正確に把握し、より質の高いサービスを提供できるように努めたい。